モンサンミッシェルのプラーおばさんのオムレツの秘密

注:「モンサンミシェル」とは、フランス西海岸、サン・マロ湾上に浮かぶ小島に築かれた修道院。カトリックの巡礼地のひとつであり「西洋の驚異」と称され、1979年「モンサンミシェルとその湾」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録され、1994年10月にはラムサール条約登録地となった。サン・マロ湾はノルマンディー地方南部・ブルターニュとの境に近い位置にある。

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この地方の産業に鍋やフライパン作りがある。銅の赤鍋がやたら吊るしてあった。どうもここになにか秘密があるようだ。

現代の一流といわれるシェフのいるレストランの厨房を覗くと、たしかに鍋はこの銅鍋を使用していることが多い。私の想像だが、シードルを入れて泡の立った卵を急激に閉じ込める方法は、熱伝導が良い銅のフライパンが最適だということになる。しかしそれだけではない。鉄のフライパンの場合だと油を流すと鉄独特の匂いが出てこれがタンパク質のオムレツに簡単に移ってまずくなる。が、銅の場合だと匂いを移さない。

ユネスコの世界遺産目録の恩恵はいうまでもないことだが、このあたりの組み合わせに田舎の旅籠料理が世界的に有名になった、秘密ではない秘密のしかけがあったのではないか。

モンサンミッシェルのプラーおばさんのオムレツの製法は、企業秘密というと大げさだが一応秘密なので、何をどのようにして作るのかわからない。しかし、味は全部同じだとは思えない。その時々で変わるようだし、その意味では秘密は守られてないのではないかと思ったりはする。

したがって、食べてみて、他のオムレツと相当の隔たりがあるとは思えない。それは鶏を食べるのと卵で作ったオムレツを食べるのとの違いほどはないということだ。ではどこに違いの秘密があるのか考えてみた。

推測できるのは、卵焼きの中身の泡をどう作るかに、この店のコツがあるようだ。材料はフランス一般に使用されている無塩バターではなくて、ブルターニュ特産の塩入りバター、卵、ひょっとしてビールのかわりにシードル(リンゴのサイダー)が入っているのかもしれない。シードルはドービルなどのカルバドス地方も近いし特産物でもある。リンゴの糖分が二酸化炭素とアルコールに分解したもので瓶の底にはわずかにオリが残るのはブドウ酒の場合とおなじだ。あの発泡性のオムレツの中身はこれが秘密だと思える。

プラーの名物オムレツ作りの実演は、店先から見れる。泡立て器を手にして何度もかき回しているが、それにコツがあるとは思えない。人によって器具の回転のさせかた、速度、丁寧さなどに異なりが見られる。むしろ写真の右にある赤がねのボールに謎があるようだ。バターはみんな同じだと一流のコックさんでも思っているようだが、この地方で夏の間だけとれるバターは、ドービルで一度だけ食べたことがあるがうまかった。市販されているものでは桶に入ったエシキエーのものを思い出してほしい。いずれにしても、ここブルターニュはバターの国である。(ブログ「フラネットーパリ通信」より。)

 

 

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