旅―アイルランド②広大な庭で時を忘れるーロッククルー・ガーデン

09.09.07 by   カテゴリー : 世界の窓

emi loアイルランド東部ミース州にあるロッククルー(Loughcrew)は紀元前3000年から5000年頃に使われていた巨石墳墓がある場所として知られている。この一帯はプランケット家(アイルランド最後の聖人といわれるオリバー・プランケットが著名)が所有してきたが、17世紀半ば、ネイパー家の手に渡った。

 現在でもロッククルーの一部はネイパー家が所有するものの、その敷地は当初の18万エーカーから現在のほぼ200エーカーとなり、大幅縮小した。16世紀に建造された大邸宅「ロッククルー・ハウス」は火事で焼け、1821年にも、再度火事で損害を受けた。災難は続くもので、1964年にもまた火事が。1980年代

以降は、焼け残った邸宅を一部再修復し、チャールズ・ネイパー氏とその妻のエミリーさん、3人の子供たちが住んできた。

 結婚したばかりのチャールズさんとエミリーさんがここに住みだした時、「邸宅」というのはおそらく正確な言葉ではなかった。二人が生活の場としたのは元の馬具収納室。浴室はなく、羊ややぎが台所を出入りするような有様だった。チャールズさんは「ここが家族が普通に住める場所にしたい」と思ったそうだ。

―エミリーさんが立ち上がる

 作業の音頭をとったのはエミリーさん。建築家を見つけ、壊れた家具を買い集め、フランス製の布をいすに張るなどの細かい修復作業も監督した。

 エミリーさんの頭にあったのは、自分が育った、イングランド南東部バッキンガムシャー州にあるウェスト・ワイコームの大邸宅だった。エミリーさん自身がイングランド地方の名門ダッシュウッド家の出身なのだ。

 何とか家族の家を作りあげたエミリーさんが12年前から力を入れてきたのが広大な庭の修復作業だ。

 ロッククルーの庭の入り口にあるカフェでランチを食べていたら、深緑色の長靴を履いた、ラフな格好の女性が現れた。スタッフに聞くと、エミリーさん自身だった。ツアーの私たちと話すうちに、「良かったら一緒に回りましょうか」と声をかけてくれた。

 「何世紀も誰も何も手をかけてこなかったの。私が来た時はひどい状態だったのよ」とエミリーさん。

 大樹の緑や様々な花の形、木の枝から顔をのぞかせる「猫」(本物ではない)などに気を取られていると、あっという間にエミリーさんはどんどん先を歩いていく。

 元の所有者プランケット家が使っていた教会、水生植物園、森林浴ができそうな配列の木々、大樹、池、小川、噴水、色とりどりの花が咲き乱れる花壇、「不思議の国のアリスの通り道」―丸一日、歩き回ってもあきず、いつまでもぼうっとしていたい誘惑にかられた。

 エミリーさんの先祖をたどれば、チューダー朝初代のイングランド王ヘンリー7世(在位1485年―1509年)がいる。結婚した先のネイパー家はアイルランドの名門の1つだが、エミリーさんは「数世紀前から所有していた土地に今でも住んでいる家は他にはほとんどいない」と悔しそうにこぼした。「この地を何としても活性化したい。守り抜きたい」というエミリーさんの志が垣間見えた。

 アートに関心が高いエミリーさんは、めっき細工を学び、自分でも教えるようになった。敷地内では年に何回か、エミリーさんによるめっき細工教室が開かれている。2000年からは、毎年、オペラを開催している。出席は正装だ。今年は5月に「ラ・ボエーム」を上演したばかり。

 一緒にガーデンを回ったツアーガイドの男性は「こんな場所があるなんて、知らなかった」とため息をついた。結構、穴場なのかもしれない。

 ロッククルー・ガーデンは毎年3月から10月までオープン。入場は大人が8ユーロ、子供が4・50ユーロ。説明付ツアーは別料金となる。情報(英語)は以下。 www.loughcrew.com/

 

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