なぜロシア語には「頑張る」と言う動詞はないのでしょうか?

A:「今は何をしていますか?」 B:「何もしていません」。このような応答が外国人ためのロシア語教科書の最初の課にあることは珍しくありません。「何もしない」というのは、「今は仕事中ではない」、「大したことではない」、「楽しむことをやる」を意味します。例えば、音楽を聴くこと・絵を描くこと・ソファーに横になって夢想にふけることなどなど。一人一人のロシア人は自分らしい「何もしない」すべを知っています。
「ニェヂェリャ」(週間)というロシア語は「何もしない」を意味します。一週間の間中何もしないことはロシア人の理想的な生活でしょうか?実は、古代スラブ語では「ニェヂェリャ」という言葉は、元々は「日曜日」の意味でした。平日は仕事をして日曜日には休むことは当り前のことです。しかし、ロシアでは988年になって、日曜日は「ヴォスケレシェニイェ」(復活)を意味し始めました。スラブ民族の人々はキリスト教に抵抗して、「週間」を「ニェヂェリャ」(何もしない)と名付けたのです。
「何もしない」ことの楽しみの由来は、昔のロシアの田舎の生活にあるのだと思います。暑くて短い夏は畑の仕事が沢山ありとても忙しいのですが、秋の収穫が終わると寒い季節が来て、それまでの生活とはすっかり変わってしまうのでした。人々は家の中で温かいペーチカの周りで生活するのでした。ペーチカの中で毎日料理を作りました。ペーチカの上は温かい寝床になっていて、その上で寝そべって過ごしたり、うとうとと夢を見たりして過ごすのでした。
冬が長いので(ロシアの北方では9月中旬から4月までが冬将軍が居座っています)、家の中にこもって家事をしたり、針仕事をしたり、手細工をしたりするだけでした。又、長い冬は「ポシデールキ」(農村の若者の夜会)とお祭りの「何もしない」時期でした。ロシアのことわざの「仕事にも遊びにも、それぞれの『時』というもの」
があるは「よく働き、よく遊べ!」を意味します。
「落ち着く」ことは日本人だけでなく、ロシア人も大事にします。しかし、ロシア人は「頑張らない」のです。何故ならば、「必要以上」の行動・活動というのは不自然だという考え方によっているのです。
何かの行動や活動中に、急に思い立って「とても大事なこと」を、例えば人生の目的とか人生の無常などを考え始めることは、ごく自然なことなのです。運や思いがけない巡り合わせに任せ、それに従って人が自分の人生を生き、普段の生活を送ることは自然なことなのだと考えているのです。運命がそうさせているのだと考えると、それに逆らってまで頑張る必要性はない、という意識なのです。
それを表している一つの象徴は、ロシアの有名な言葉「アヲシ」です。「アヲシ」は自分がなにもしなくても、すべてがうまくいくという意味です。網には「アヲシカ」という名前が付いています。「アヲシカ」の意味は「穴があるが、大丈夫かもしれない」という意味です。
モスクワの一番短い通りには「レニヴカ」(怠け者)という名前がついています。ロシア人が「何もしない」ことを大事にしている知恵の表れだと思います。ロシア人は「怠け」について良い感情を持っていると思います。ロシア文化の中で一番有名な怠け者はゴンチャロフの小説『オブローモフ』(Обломов)の主人公です。小説の始めから三分の一まで、主人公オブローモフは寝床から一歩も出ないのです!
ロシア語では「がんばる」という動詞がない理由は、いろいろあります。そして最近、ロシアにおける日本研究者たちの間で新語が生まれました。「ガンバリツァ」という言葉です。恐らく、その理由は、「頑張る」ことなくして日本語をマスターすることはかなわないからだと思います。将来多分、日本語を学ぶロシア人の数が増えるにつれて、ロシア人は徐々に「頑張る」ことを始めるようになることでしょう。…でしょうかね!
―日刊ベリタより転載

http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200910311546576

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