「高次脳機能障害と仲間たち」② 「見えない病気」と呼ばれる高次脳機能障害とリハビリ

09.03.18 by   カテゴリー : 日々の出来事

高次脳機能障害を負ってしまった方は、 受傷以降、原因となった病気の再発、事故による損傷の悪化を防ぐための治療と併せて、心身の症状緩和・改善のためのリハビリに継続的に取り組むことが必要になり、当事者・家族には大きな負担となります。

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仕事をされていた方が能力・意欲が低下し従来の仕事が出来ないことで解雇同然の扱いを受けることもあります。生計を立てている方が受傷した場合、ご家族は経済的に厳しい状況に追い込まれます。また幼児、学生の時期に損傷を受けますと、教育をどういう形で受けさせるかが大きな課題になります。高齢者が脳卒中などで障害を抱えた場合、加齢と闘いながらリハビリをするという状況になります。

リハビリ、リハビリテーションは障害の克服生活機能の改善・向上と捉えられており、誰でもこの言葉通りのことを期待します。しかし現在の保険・福祉制度、医療体制では必ずしも満足のいくリハビリを受けられない状況にあります。

手足の麻痺、運動障害などの身体的障害を克服するためには、病院のリハビリテーション科の医師および理学療法士(PT:Physical Therapist)、作業療法士(OT:Occupational Therapist)による治療が非常に有効です。

近年、身体的リハビリの方法は驚異的に進歩したと思います。急性期の直後から身体を動かす動作を行い、その事が脳にも良い影響を与えると言われています。回復期、維持期のリハビリ方法にも様々な工夫が取り入れられています。フィジカル面のリハビリは、たとえ週1回でも状態を維持し元の状態を取り戻そうとする意欲を持ち続けるために重要な役割を果たします。

満足できるリハビリの実現を困難にしている大きな要因は、リハビリを受ける期間が制限ざれていること、所謂180日問題です。

脳の機能回復を目指すリハビリは、神経内科、リハビリテーション科、精神科の医師および言語聴覚士(ST Speech Therapistにより行われますが、脳・心の改善は非常に大きな困難を伴う、容易でないことはご想像いただけると思います。

医療機関でのリハビリ内容及び期間は限られています。退院、通院後に福祉施設で自立、社会復帰に向けての活動をすることも可能ですが、その受け皿はまだまだ少ない状況です。

継続的なリハビリをする場としては、医療機関(かなり限定される)、個人的なリハビリ研究所、そして調布ドリームのような一部の家族会・リハビリサークルで行われています。

そういった組織、機関を利用するとともに、家族、周囲の方が温かく見守りながら、当事者のそのときの状態にあった日々を作り出すことが症状の改善に有効だと思います。

慈恵医大リハビリテーション科の粳間医師の講演を聞く機会がありました。その時、「なるほど」と腹落ちしたことがあります。「人間は群れて生き進化してきた動物、人間的機能を回復するためには群れの中でかかわり合うことがリハビリに非常に有効」という意味のお話を伺いました。コミュニティという言葉より、日本人には群れという言葉のほうがぴったします。

また先生のご説明のなかで、「脳にはある意味での冗長性、リダンダンシーがあり、ある部位が損傷してもそれを他の部位が補う、あるいは損傷した機能を回復しようとする」と話されました。このご説明で我々家族、当事者は非常に勇気付けられました。

私はリハビリサークルの調布ドリームのメンバーとして20名以上の当事者と関わっていますが、この方々と接した経験から確信を持って言えることがあります。

―高次脳機能障害の症状は必ず改善する、良くなる!

高次脳機能障害のリハビリの世界では、ニューヨーク大学ラスク研究所が知られています。ここはこの障害専門のリハビリ・スタッフによる高度なリハビリ・プログラムを実施しており、全世界から患者が集まっています。

ここのシステムのひとつの特徴は、当事者に加えて近親者1名の参加、アテンドが必須であることです。本人がリハビリをするだけではなく、近親者が高次脳機能障害を理解し本人に接し生活を組み立てることがその後の人生に必要だからです。

このプログラムを利用するためには、当事者/近親者とも英語が堪能であること、また渡航費、半年程度の滞在費、医療費など、かなり高額な費用を要します。このような条件では日本からの利用は非常に困難ですが、それでも現在治療中の方を含めて、3名(組)の日本人利用者がいると聞いています。

―障害者数とその福祉施策

東京都は2007年度に「高次脳機能障害者実態調査」を企画し実施ました。その結果、2008年1月に都内の医療機関を調査したデータを基に統計的に推計した結果、年間4,674名発症し、障害者は49,508名と発表しました。年齢別では脳卒中が高齢者に多いことから60歳以上が67・4%、若年層は事故等の外傷による障害者が大きな割合を占めています。

東京都の人口が日本の10分の1とした場合、全国では50万人に達すると想定されます。脳卒中患者は全国で140万人というデータがありますので、この数はもっと多いかもしれません。

このような多数の障害者が存在するにも拘らず、この障害に対する福祉施策はまだまだ貧困であると言わざるを得ません。

国(厚生労働省)は高次脳機能障害について、平成13年度から本格的に研究に取り組み、平成16年に診断基準を定めて支援に乗り出しました。その結果、3障害(身体、知的、精神)の分類の内、精神障害と規定し障害者手帳を交付することとしました。また通常は65歳以上の方々が対象となる介護保険で、40歳以上の脳血管疾患者がその対象となっています。また自立支援法の施行により、従来の3障害の枠にとらわれず各種福祉サービスを受けることが可能となりました。しかしながら取り敢えずの相談窓口となる行政機関において、この障害を理解し適切なアドバイスができる自治体は未だ少ないと思います。

この障害の困難さに対して、福祉、医療の態勢はまったく不備であり、今後の支援拡充が強く望まれています(続く)。

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(スライド写真はイメージwww.freefoto.com/

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