何故コサックは“しゃがみ踊り”をするのでしょうか?(上)

 清水先生(清水 馨八郎;しみず・けいはちろう)は『手の文化と足の文化―先端技術ニッポンの謎を探る』という本の中で、日本文化を“手の文化”、西洋の文化を“足の文化”と述べています。それぞれの文化の中で生まれた踊りを観察すると、清水先生が気づいて述べられた特徴がよく理解できます。 
 
 スラブ文化の中から生まれてきたロシアやウクライナのコサックダンスには高くジャンプするとかしゃがんで踊る「従来のスラブ民族のフプリシャーヅク(вприсядку)と呼ばれるダンス」とかの動きが多いことが特徴的です。 
 
 どうしてこのようなダンスが生まれてきたのでしょうか?北国ロシアの寒冷な気候がその理由でしょうか? 人は寒い時には体を温めるためにジャンプをしたりしゃがんだりするのでしょうか?

 確かに、ロシアではお祭りは秋や冬に祝うことが多いのですが、寒冷な気候のためにこのような奇妙な特徴的なダンスが生まれてきたと説明するのには疑問が残ります。 
 
 実は、“しゃがみ踊り”の伝統はかなり古いのです。6世紀の秘宝の一つとして、ダンスをしている4人の男の銀製の像が発見されました。両手を腰に当てて立ち、膝を曲げています(ソビエト時代の考古学の調査から6~8世紀の東スラブ民族のものとされています)。
 
 男性のダンスには大胆さがあり、しばしばユーモアがあります。女性のダンスは柔らかさ・しとやかさ・軽いあだっぽさ(肩掛けを利用しての媚びる・色目を使う・たわむれるというようなジェスチャー)など特徴的です。 
 
 もう一つのロシアのダンスの特徴として、“勝負踊り”があります。例えば、有名な“バーリニャ”(Барыня)というのは一種の“呼びかけ”で、普通の女性がより高い階級の女性に話しかける形態として普通の庶民の女性によって使われたものです。この踊りは、男性二人と女性一人で踊ります。なぜ男性二人と女性一人かというと、二人の男性が一人の女性をめぐって競争しているからなのです。ダンスの振り付けには決ったやり方というものはなく、踊っている人は絶え間なく振り付けを変えます。上手に踊ったほうの男性が勝つというのが決まりでした。 
 
 “勝負踊り”にはいろいろなものがあります。“ヴァーレンキ”ダンス(「ヴァーレンキ:валенки」はロシアで伝統的に履かれているフェルト製の防寒長靴)、“ヴェセゥーハ” ダンス「愉快で陽気な気持(веселуха)」、“トポツーハ”ダンス「足踏み(топотуха)」など。“勝負踊り”の多くのものは鳥(鶴やガチョウなど)の動きを真似ているダンスです。 
 
 昔は“勝負踊り”は縁日に催されました。一人の踊り手は振り付けをし、もう一人はそれに従って踊るのでした。そしてダンスを競うもう一つの方法がありました。踊り手たちが新しい振り付けをし、別の踊り手がその新しい振り付けに従い踊らなければならないというものでした。新たな振り付けに従ってもう踊ることが出来なくなった踊り手は“負け”となります。どの踊り手が勝つかにお金が賭けられました。賭けに勝った踊り手はご褒美をもらうことができました。それで、踊り手は一生懸命に練習するのでした。新しい振り付けに従い一生懸命に競って踊るのでした。 
 
 そして新しい振り付けは思いつかなくなった時に、“しゃがみ踊り”を思いつき始めたではないでしょうか? 〔日刊ベリタ・連載)
 
*「コザック (казаки)というのは15~17世紀ロシアの自由民であり、帝政ロシアのコサック兵やその出身者のこと」 

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