お勧め番組 22日 午後6時 NHK BS1 「BS世界のドキュメンタリー カンボジア 虐殺の記憶 ポルポト時代を生き延びて」
(大妻女子大で教える波津博明先生が学生に送るメールの一部を紹介しています。)
珍しく、通常のお勧め番組案内です。
●はとくにお勧め。◎はぜひ見て!
20日(月)
◎午前6時40分 BSジャパン 「池上彰の20世紀を見に行く」
※何度かお勧めしましたが、これは本当にお勧めです。毎日朝。一回20分です。毎回録画すれば、とてもいい映像資料になります。リアルタイムに見ることは困難ですし。 こうした現代史の知識や認識、イメージがないと、大学の授業も本当にやりづらいのです。見た方がいいよ、というより、実のところ、僕の授業の受講生には必修にしたいくらいなんですけど。4月から、3年生向けには「マスコミュニケーション論」、後期は「暮らしと国際政治」が始まります。いずれも、今年からできる新科目です。これまで以上に現代史にかかわる科目なので、今の2年生は準備の意味でも本当にぜひ・・・。もちろん、一般市民のみなさんにもお勧めします。
午後9時 NHKBSプレミアム 「極上美の饗宴 東山魁夷の旅②挑戦の京都」
午後10時 NHKBSプレミアム 映画「ドライビング ミスデイジー」
●午後10時 NHK総合テレビ 「プロフェッショナル 仕事の流儀 デザイナー梅原真」
●深夜0時 NHKBS1 「BS世界のドキュメンタリー シリーズ・アラブ世界 変革のうねり 非暴力革命のすすめ ジーン・シャープの提言」
21日(火)
午後1時 NHKBSプレミアム 映画「無法松の一生」
午後10時 NHKBSプレミアム 映画「レインマン」
◎午後10時 NHK教育テレビ(Eテレ) 「さかのぼり日本史 平安時代 藤原氏はなぜ権力を持ち続けたのか③他氏排斥」
※毎週やってます。同じ日の早朝5時10分には、このシリーズの前週分を再放送します。高校時代、日本史が苦手だった、あるいは「選択しなったので、全然知らない」などという人も、この番組をきっかけに日本史に興味を持ってほしいものです。なにしろ、自分の国の歴史が「選択」っていう、とんでもない教育体制の中に生きているわけで、自衛しないといけません。外国の友人から日本のこと聞かれて、「学校で選択しなかったから、何も知らない」と答えるというのは、ちょっとまずいのではないかと思います。自分の国の歴史は、そもそも、学校でだけ習うものではないでしょう・・ 。
●深夜0時 BS1 「BS世界のドキュメンタリー シリーズ・アラブ世界 インサイド・シリア」
※シリアのアサド政権による民衆弾圧は限界を超えつつあります。ただ、一連のシリア報道で、気をつけるべきは、なぜアメリカは、エジプトやチュニジアの時には、早期に権力者の退陣を要求しないで、シリアでは、アサド退陣を求めるのか、という点です。これが、よく知られたアメリカの「2重基準」です。エジプトの旧ムバラク政権は親米、シリアは反米。違いはそこです。西欧諸国もこれに近い。普遍的な「自由」と「民主主義」の理念の基づいて欧米がシリアに民主化を求めているなどと考えたら、とんでもない間違い。今も、バーレーンの国王専制体制は反対派弾圧を強化していますが、同じ中東のバーレーンには、アメリカは何もいいません。バーレーンの国王政府は親米だからです。
22日(水)
◎◎午後1時 NHKBSプレミアム 映画「楢山節考」
※日本の貧困とは何か。是非見てください。70歳を過ぎた老人は、山に捨てられる村の物語。昔はよくあった話です。深沢七郎の原作の映画化。
◎午後6時 BS1 「BS世界のドキュメンタリー カンボジア 虐殺の記憶 ポルポト時代を生き延びて」
※欧米、日本の偽善は、ここにきわまるといえるでしょう。シリアのアサド政権が殺した人の数が5000人を超えたという数字も出ています。反体制派が出した数字なので、水増しもあるでしょうが、多数の人が殺されていることは事実です。許すべき事態ではありません。アメリカが非難するのも、それについては、確かに間違っていない。
では、カンボジアのポルポト政権は? エジプト、チュニジアどころではない。1979年、隣国ベトナムと、それに支援されたカンボジア人民革命党の武装闘争によって、権力の座を追われるまでに、ポルポト政権が虐殺した人の数は、150万人とも200万人ともいわれる。カンボジア全人口の4分の1といわれる人が、自国政府によって殺されたのです。その悲劇は、アメリカ映画「キリング・フィールド(殺戮の原野)」で有名です。強烈な場面・・地平線の彼方まで、地は人間の頭蓋骨でおおわれているのです。
さて、首都を追われたポルポト派はどうなったか。「カンボジア難民」という名目で、タイ国境地帯に拠点を築き、その後10年以上もテロを続けたのす。しかも、首都に人民革命党の新政権ができているのに、アメリカは中国や日本とともに、これを無視して、ポルポト派を「カンボジアの正統政権」として、国連代表権を与え続けました。難民援助と称して、ポルポト派には多額の援助も。なぜか。当時、アメリカは、ソ連・ベトナムを敵視しており、ソ連の敵はアメリカの味方、という立場だったからです。ポルポト派は、中国べったりで、反ソ、反ベトナムでした。ベトナム戦争でベトナムに敗れたばかりのアメリカは、その怒りもあったのでしょう、「反ソ」「反ベトナム」を掲げるポルポト派を支援し続けました。よりによって、「東南アジアのヒトラー」ポルポトを。シリアのアサドが、ポルポトより悪いとは、到底思えないのですが。
ポルポト派とアメリカの関係については、恥ずかしながら、拙著「データベース 戦争の研究2」(光人社)をお読みください。
波津先生のお勧め番組
〔大妻女子大でライフデザインを教える波津博明先生が学生に送るメールの一部を紹介しています。)
番組案内
以下は、お勧め番組案内。絶対お勧めは、5日の夜10時のアメリカ映画「チャイナ・シンドローム」。今回の福島原発事故を予言するような原発事故の映画です。
●は、とくにお勧め。
◎は、是非見てください!
◎◎以上は、「見ると見ないでは、人生が変わる」というくらいの衝撃。
5日(月)
午後8時 BS朝日 「BBC地球伝説 タイタニック 真実の物語」
※タイタニック号の悲劇は、歴史的事実です。あの映画にとても感動した人、4年生の「環境文明論」や「地球市民論」で、ラミスの「タイタニック現実主義」という絶妙な命名を学んだ卒業生などは、とくにお勧め。実際にはどんなことが起こっていたのか??
◎◎午後10時 NHKBSプレミアム 映画「チャイナ・シンドローム」
※是非見てください。都合がつかなければ、録画を。1979年公開の映ですが、公開中か公開直前に、あのスリーマイル原発の大事故が起きて、観客が殺到したという逸話が有名な、原発事故の映画。しかも、原発の不調は事前にわかっていたのに、電力会社はそれを隠し、職員から内部告発を受けたジャーナリストは、上部からの圧力によって、報道を妨害される。電力会社側は、証拠文書隠滅のため、殺人も犯す。最後に、良心的職員は何をしたか?!
この映画以来、原子炉の炉心が溶けて流れ出すことを「チャイナ・シンドローム」というようになりました。なお、この映画は、3年ほどまで、「環境文明論」か「リスクマネジメント論」の授業でも上映しました。卒業生の皆さん、覚えていますか。危険は常にあるとはいえ、3年後に日本で現実に大事故が起きるとは、あのころは予想していませんでした。
ところで、ここで1つ、とても重要な疑問。これは、原発事故をテーマとした、史上もっとも有名な映画で、NHKの人々が知らないはずがありません。メディアの人間なら、福島の事故の直後に、放送したいと思うはずの映画です。それをなぜ、12月にもなってからの放送なのか。おそらく、NHK上層部が、「あまりにも、東電、福島原発の事故に直結する内容のため、放送を阻んだ」ということではないかと思います。意図的に、放送を、インパクトの少ない時期まで控えておいた、ということです。12月にもなって、やっとこの映画が放送されるということ自体が、劇的な事態です。現実が映画の延長のような感じにとらわれます。また、民放では、今になっても、放送されません。電力会社がスポンサーになっているため、民放は、さらに難しい立場に立っています。編成局の人々が放送しようとしても、上層部が許さないでしょう。NHKのジャーナリストたちは、その点、少しは動きやすいのでしょう。
さらにいうと、夏以降、NHKがかつて制作した優れた原発番組などが少しずつ放送されるようになりました。チェルノブイリのドキュメンタリーなど、これまた、福島の事故直後にこそ放送すべきでした。ですが、そうすると、事故の大きさが具体的にイメージできてしまい、東電と政府に対する国民の怒りが増すため、それを避けるため、時間稼ぎをしたということでしょう。そんなことも考えながら見るといいでしょう。
3年生は今年、「生活と規範意識」の授業で、「国のあるべき『規範』を掲げて、国家権力と戦うジャーナリスト」を、いろいろな形で見てきました。この映画でも、ジャーナリストが、権力と戦います。映画では、テレビ記者ですが。日本におけるジャーナリズム、ということも考えながら、見てください。
6日(火)
●午後8時 BS朝日 「BBC地球伝説 パイレーツ・オブ・カリビアン 真実の物語」
※映画の世界だけでなく、もちろん海賊は現実に存在したし、主な舞台はカリブ海でした。本当の海賊とはどんな存在だったのか。あの映画が好きな人には特にお勧めです。
●午後9時 NHKBSプレミアム 「発見!驚異の大宇宙 ボイジャー 太陽系を超えて」
◎午後10時 NHKBSプレミアム 映画「ネットワーク」
※アメリカのテレビ界の実態を描いてヒットした、有名な映画です。アメリカ映画では、新聞記者の英雄的な戦いと、同時に、テレビの腐敗が大きなテーマです。「チャイナ・シンドローム」でも、現場の良心的なテレビ記者の活動を、局の上層部がつぶそうとします。メディア(映画・音楽)研究会のメンバーは是非見てください。
本ができました。「英国メディア史」です。
本がやっと、できました。「英国メディア史」(中央公論新社・選書)。「中公選書」の創刊となります。数冊まとめて出すシリーズで、今回は5冊。私の本はその1冊になります。10日から書店に並ぶ予定です。
自分で手に持ってみた感じは、400ページを超えるため、やや厚い+重いかも。ですので、是非、ゆったりしたところで、じっくり読んでみてください(まずは書店で買うに足るかどうか、確かめてみてくださいーー恐縮ですが、お値段がはりますのでーー1900円+税金!!)。昔の話はすっとばし、現在に近いところからお読みになってもいいかもしれないです。
英国のメディアの歴史(新聞がいつから発行されたか、BBCがどうやってできたかなど、マードックの話もありますーールパート・マードックの父が、著名なジャーナリストで、オーストラリアでは非常に高い評価を受けている人物だったことを、この本を書くことで、初めて知りました・・・)と、英国の歴史の流れとの2本立てです。
昔から現在まで英国メディアの歴史をたどってみての感想は、英国のメディアは「たくましいなあ・・・」ということ。ちょっとやそっとでは揺らがないし、あくどい手を使って取材をしたりもするんだけど、権力の監視というか、調査報道もそれなりにやっている、と。このタフさは、肉を食べているからなのか(!?)――まあ、それは半分冗談としても、どうもいつも、「権力者対それに抵抗・反抗する人」という構図ができる。そして、なんだか、いつも闘っている。
そして、こんなタフなメディアがある英国の国民というか、英国に住んでいる人もタフだなあ・・・と。多分、英国人(+住んでいる人)は、上からの統治が非常にしにくい人たちなんじゃなかろうか、と思う。「いいから、こっちの言うことを黙って聞きなさい」って言われても、聞かないと思う。(「黙ってこっちの言うことを・・」という人も少ないけれど。)
それで、最終的には、「自分が判断する」ということ。何しろ、右から左、あるいはそれにおさまらないもろもろの見方があって、みんなが好き勝手にそれぞれの思いを主張しているので、自分でどれが正しいかを決めないといけない。あることが正しいかどうかっていうことは、原則、自分が「正しい」と思えば、「正しい」ということになる、と。ほかの人が別のことを「正しい」と思っていたって、別に構わないのである。人それぞれ、違うのだからー。自分で答えを見つけないといけない。
―感銘を受けた人
昔、「サンデー・タイムズ」に、ハロルド・エバンズという編集長がいたのだけど(マードックに追い出された)、この人は本当に熱血漢の編集長で、エピソードをたどるうちに、感動してしまった。職場でもそうだけど、チームを引っ張る人が熱いと、チームも良い仕事をする、という感じ。
もう1人、オックスフォード大学の教授でDiarmaid MacCullochという人がいるのだけど、この人は、キリスト教の歴史に関する本を何冊か、出した人。BBCでキリスト教の歴史に関わる番組も作った。私は夢中になってBBCのテレビを見ていたのだけど、歴史について書くこと・勉強することは、昔の人がどんな風に生きていたのか、「想像力を使うことだ」とインタビューに答えていたのが印象深かった。書いている間、何度もこれを思い出した(ほかにもいろいろ、感銘した点があるのだが、この教授のキリスト教の歴史に興味のある方は以下などでー。http://www.bbc.co.uk/programmes/b00nrtr8 )
―意外かもしれないエピソード
現在のBBCを作ったのは初代ディレクター・ジェネラルのリース卿なのだが、この人には、実は私生活に「ある秘密」があった・・・という話も。そしてこの秘密は意外なところに、堂々と出ていたー。
などなど。どうぞよろしくお願いいたします!(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より)
***本には以下の訂正があります。
*360ページ、10行目、「そんな機会が訪れたのが2010年春である」ではなく、「そんな機会が訪れたのが2009年春である」。
*362ページ、7行目、「紆余曲折の後、2010年1月に」ではなく、「紆余曲折の後、2009年1月に」の間違いです。
波津先生の番組案内 -映画「猿の惑星」の意味とは?
きょうから3日間の番組案内です。
きょう7日(月)
●午後5時 BSTBS 韓国歴史ドラマ「太王四神記」
※かつてNHKで放送したものの、原語版再放送。もう10数回やってしまいましたが、お勧め。僕もところどころしか見てませんが、定年になったら、通してみたいと思います。高句麗の好太王を主人公とした歴史ロマンですが、日本の場合、このころの記録がほとんどないこともあって、こういう古代時代劇が滅多にありません。そんなことも考えながら見ると、さらに面白いでしょう。
●午後8時 BS朝日 「BBC地球伝説 地中海6つの旅 『石と建築』」
※大半が木で出来ていた日本の建築。一方、欧州南部や中東、インドは、ほとんどが石です。火事の問題を含め、石の建築は、永続性という点では、木の建築をしのぎます。なぜ、日本では石の建築が成立しなかったのか(中国にはたくさんありました)、それが何を意味するかなどを考えながら見ると、とても勉強になると思います。
◎◎午後10時 NHKBSプレミアム 映画「ひまわり」
※1970年制作のイタリア映画。大戦中、イタリア軍兵士として、ドイツ軍とともに、ソ連に送り込まれ戦った男が、捕虜となり、戦後、ソ連で暮らし始めます。しかし、その消息はイタリアには伝わらない。イタリアに残った婚約者は、戦後何年もたってから、彼を探してソ連に出かけます。しかし、彼には、ソ連で新しい妻と子供が・・・。戦争のためにゆがめられる愛の悲劇を描いた歴史的傑作です。テーマ曲も大ヒットしました。是非お勧め。主演はマルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン。いずれも超名優として有名です。
◎午後10時 BSフジ ドラマ「北の国から」
※「ひまわり」とぶつかります。倉本聡脚本の、80年代のこれまた歴史的傑作ドラマといわれる「北の国から」の再放送。これも、かなり放がされてしまいましたが、遅ればせながら、ご案内します。途中からでも充分楽しめると思います。筋はチェックして。
◎午前0時 NHKBS1 「世界を震撼するマネー・ギリシャ財政破 監査に立ちあがる市民たち」
※世界経済に甚大な影響を与えつつあるギリシャの危機。しかし、ギリシャ市民はそれにどう立ち向かおうとしているのか。市民の視点からの貴重な番組です。日本の学生の就職状況の行方にもつながる問題だけに、要注目。
8日(火)
◎午後1時25分 TBS 映画「スターリングラード」
※傑作ですが、背景知識があったほうが、理解しやすいでしょう。
午後7時 BS日テレ 「もう1つの古代ローマ都市 ヘルクラネウム」
午後8時 BSTBS 「昭和のお風呂」
◎午後10時 NHKBSプレミアム 映画「戦場にかける橋」
※戦争映画の傑作。ビルマ(ミャンマー)で日本軍の捕虜となった米英軍将兵は、日本側の過酷な労働強制と暴行に、どう対応するか? 大ヒットしたテーマ曲とともに、永遠の名作の1つです。アメリカ人とイギリス人の気質の違いも、見所です。そして、何より、日本人として、これをどう見るか。
重要なことを1つ。原作はフランス人のピエール・ブールですが、ブールは、東南アジアで、白人支配を崩壊させた日本人を見て、リアルな小説として、この作品を書き、さらに、SFとして、「猿の惑星」を書きました。それが映画化され、日本でも1968年、大ヒットします。今上映中のリメイク版の「ジェネシス」では、全く設定が変えられていると思いますが、ブールはもともと、ほかでもない日本人を、白人文明のものまねをする「猿」として描いたのです。それを知ると、ショックでしょうが、そのことの意味をじっくり考えるのも学びです。僕も、中3の終わりごろ、何も知らずに、「猿の惑星」を封切りで見て、大感動しました。それまでに、これほどの衝撃を受けた映画はなかったのです。その数ヶ月後、あの大傑作「2001年宇宙の旅」を見るまでは。しかし、あのとき、映画で描かれる「猿」が本来は我々日本人のことだった、とは全然知りませんでした・・・
●午前0時 衛星第1テレビ 「ギリシャの悲劇 危機に揺れる村」
9日(水)
●午後1時 NHKBSプレミアム 映画「ダントン」
※ポーランドの鬼才アンジェイ・ワイダ監督の力作ですが、これも、フランス革命の基礎知識がないと、少し難しいかもしれません。
◎午後6時 NHKBSプレミアム 「名曲探偵アマデウス ベートーベン 第9」
午後10時 NHK総合テレビ 「歴史秘話ヒストリア 世界遺産 平泉」
午後10時 NHKBSプレミアム 映画「三銃士」
午前0時 NHKBS1 「世界のドキュメンタリー ウォール街のクラッシュ」
波津先生の「番組案内」
明日とあさっての2日分にしておきます。NHKBSプレミアムに集中的にいい番組が目立ちます。
27日(火)
◎午後1時 NHKBSプレミアム 映画「グッドモーニング・ベトナム」
※ベトナム戦争の真実に迫った、優れたアメリカ映画の1つです。1987年制作。お勧め。
午後8時 NHKBSプレミアム 「旅のチカラ マイ・ラスト・ミュージックを探して ジャーナリスト鳥越俊太郎」
●午後9時 NHKBSプレミアム 「発見 驚異の大宇宙 ホーキング博士の宇宙 地球外生命は存在するか」
●午後10時 NHKBSプレミアム 映画「デルスウザーラ」(黒沢明監督)
●午後10時 NHK教育テレビ 「さかのぼり日本史 幕末・危機が生んだ挙国一致④ペリー来航」
◎深夜0時25分 NHKBSプレミアム 「BS歴史館 日本史の常識大逆転②ペリー来航 幕府は弱腰ではなかった」
※再放送です。これは面白かった。
28日(水)
午前8時 NHKBSプレミアム 「美の壺 石畳」(再放送)
●午後7時半 NHKBSプレミアム 「地球ドラマチック プードルは以下にして小型化されたか」
※今年、卒論「日本人とペット」で、人間の身勝手さを論じた小島さんほか、ペットに関心のある人、とくにどうぞ。
午後8時 NHKBSプレミアム 「たけしアートビート 伝説の宮大工 西岡常一の弟子 小川三夫」
●午後9時 NHKBSプレミアム 「世界ふれあい街歩き ドイツ リューネブルク」
◎深夜0時 衛星第1テレビ 「メンフィスへの道 キング牧師暗殺(前)」
波津先生のテレビ番組案内 18日夜はNHK教育テレビがお勧め
(大妻女子大でライフデザインを教える波津博明先生のメールの一部を紹介しています。)
何日かぶりで、番組案内を送ります。今週から、NHKの番組案内雑誌ステラが(大学の購買部より)到着し始めたので、やりやすくなりました。確かに、番組表は便利なんですけど、やはり内容のポイントは、雑誌情報がないと・・。
あす18日の一押しは、NHK教育テレビ「原発事故への道程㊤置き去りにされた慎重論」
18日(日)
午前8時 TBS サンデーモーニング
●午前10時 テレ朝 サンデーフロントライン
●午後1時50分 NHK総合テレビ 「NHKスペシャル イグネ 屋敷林が育む田園の四季」
◎午後6時 NHK衛星第1テレビ 「ドキュメンタリーWAVE フクシマの衝撃 フランス・揺れる国境の原発」
※電力供給の8割近くを原子力に依存する原発大国フランス。福島の事故のあと、フランスでは、何が起きているのか。
●午後7時54分 テレ東京 「緊急生放送 池上彰のエネルギーを考えるSP」
※池上さんは、基本的には、政府・東電と同じ認識で電力事情をとらえているようです。ただ、その範囲内ではかなり良心的で、原発のこれまでのあり方が基本的には正しい、といった見方はしていないようだし、原発依存から脱却しようという志向もはっきりしています。ただ、現在すでに、日本の場合、実は原発ゼロでも、電力は十分にあって、「今すでに原子力は不要」になっている、という認識はありません。そのために、「原発に代わるエネルギーは?」という問題の立て方をしてしまいます。確かに、フランスの場合などは、きょう原発をやめるとすれば大変です。本当に停電してしまうかもしれない。
しかし幸い、日本では、原発を動かすために、わざと使うのをやめた火力発電所がたくさんあるため、これをまた使えばいい。「原発に代わるエネルギー」をあわてて探す必要などない、という見方が有力です。となると、現在、「原発に代わるエネルギー」という言葉を使うこと自体が、政府・自民党・官僚・東電の作った土俵に上がることになるでしょう。かりに「大量の新エネルギーは見つからない」という結論になると、「やはり原発に戻ろう」という論理になるからです。
原発は今日にもやめられる。問題は、「温暖化ガスを出す火力に代わるエネルギーは?」ということでしょう。論理のすり替えを許してはならない。
その意味で、池上さんには、現状への「疑問」が足りないと思います。しかしとにかく、エネルギー問題を全体として理解する助けとしては、わかりやすくいろいろ解説してくれるでしょうから、参考にはなります。見て損はないでしょう。
●午後8時 NHK教育テレビ 「日曜美術館 地底の記憶 山本作兵衛の炭鉱画」
◎◎午後10時 NHK教育テレビ 「原発事故への道程㊤置き去りにされた慎重論」
※6月に、「ネットワークで作る放射能汚染地図」というクリ―ンヒットのドキュメンタリーを制作した、NHKの希望の星、「教育テレビ」が放つ本格特集です。これは、大いに期待できそうです。1時間半ありますが、これが前編で、後編がさらに控えているようです。前後、しっかり見たいものです。
19日(月)
午前11時20分 NHK総合テレビ 「子供だけの避難生活」
●午後1時 NHKBSプレミアム 映画「シマロン」
●午後10時 NHKBSプレミアム 映画「ジャッカル」
※きょう最長のコメントは、この映画で。時間のある方はどうぞ。
「テロリストとの戦い」という、ハリウッド映画によくある、非現実的なパターンの映画ではありますが、注目点が1つ。アメリカ映画では、アラブ人はほぼ常に「悪逆非道なテロリスト」として描かれます。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でさえ、悪役は「リビア人テロリスト」でした。リビアは、北アフリカのアラブ人国家ですね。アラブ風の服を着ていれば、殺人狂扱いです。
これが、米国内のアラブ嫌悪、イスラム嫌いを大衆レベルで拡大するのにかなりの影響を与えていると思います。
しかし、テロリストがアイルランド系の場合、一転して、同情のまなざしで見られます。この映画もそういう映画の1つです。
なぜ、アラブ人は嫌われるのか。
イスラエルとの関係です。
1948年、欧州から移民したユダヤ人たちは、パレスチナ地方のアラブ人を武力で追い出したり、脅したりして、追放しました。デイルヤシン村の虐殺など、ユダヤ過激派によるアラブ人殺しで、アラブ住民を震え上がらせ、村を棄てて逃げさせる、という手法が有名です。アラブ人がいったん、避難して姿を消した村には、ユダヤ人が入り込み、土地を奪っていきました。
こうして、パレスチナの地に成立したのが、イスラエルという「ユダヤ人国家」です。しかし、そこはもともと、パレスチナのアラブ人が住んでいた場所です。アラブ人は村に戻ろうとしました。しかし、イスラエルが作った「国境」を超えようとすると、逮捕されたり、殺されたり。イスラエルは、中東唯一の欧米系国家(だって、作ったのが、欧州から渡ってきたユダヤ人ですから)で、アメリカの外交政策を全面的に支持していたので、アメリカは、イスラエルのすることをほぼ全部許すようになります。アメリカは、イスラエルと手を組んで、アラブ人の故郷帰還の要求を徹底的に押さえつけてきました。国際会議の議題にすることさえ、拒否するほどの徹底ぶりです。そして、パレスチナの土地に帰ろうとして、イスラエル軍に立ち向かうアラブ人は「血に植えたテロリスト」と決めつけ、敵視します。これが、2001年の9・11テロの背景にあります。宗教的な面もたいへん強い要素ですが、これは、到底ここでh会説明しきれないので、割愛します。
アメリカには、ユダヤ系が600万人も住んでおり、彼らは、メディア、映画産業などで極度に大きな存在です。彼らは、イスラエル支持では一貫しており、政治や大衆文化に与える影響は巨大です。ユダヤ系を敵に回しては、政治家は選挙で勝てない、ともいわれます。
映画や大衆的な小説でも、アラブ人は、常に「テロリスト」として登場させられます。シュワルツェネッガーの「トゥルーライズ」などなど。そこでは、そのアラブ人がなぜそういう行動を取るのかは、説明されません。映画を見た人は、「アラブ人というのは、生まれつき人殺しなんだな」と思う。ですから、アメリカ政府がアラブ国家を相手に戦争するとき、世論は有利に動きます。イラク戦争でもそうです。こういうアラブ人敵視の背景には、人種偏見もあります。ユダヤ人には欧州的な白人が多いのに比べ、アラブ人は、人種的にはコーカサス人種(白人)に属しますが、暑い地方に住んでいることもあり、メラニン色素が多く、褐色の人が多いからです。
ここまでは、この「ジャッカル」という映画とは関係。
関係ないことをそんなに書くな? ごもっとも。
次は、アイルランド系テロリストの場合。なぜにくまれないのか。
この映画、FBI(アメリカ連邦捜査局)が、「悪いテロリスト」?(ブルース・ウィリス)をやっつけるために、獄中にいる「いいテロリスト」(リチャード・ギア)に、協力を依頼します。なんだそりゃ?! と思うでしょう。ギアが演じるテロリストは、英国の支配からアイルランド北部(北アイルランド)を解放するため、テロで闘ったIRA(「アイルランド共和軍」という武装組織です)の闘士デクラン。
えっ? イスラエルと闘うアラブ人闘士は、「悪役」で、イギリスと闘うアイルランド人闘士は「善玉」? 殺人で投獄されているのに、FBIが協力を呼び掛けるの?
そうなのです。アメリカ人にとって、同じように。警官や兵士を殺したり、時には市民を巻き込む爆弾テロなどを仕掛けても、アイルランド人は共感されるのです。なぜか。アメリカに、アイルランド移民の子孫がたくさんいるからです。彼らは、やり方に不満はもっても、アイルランド人が支配者のイギリス人と闘うとき、理屈抜きに共感と同情を感じてしまうのです。ケネディは100%アイルランド系、レーガンも、クリントンも、アイルランドの血が入っています。
アメリカ映画では、アイルランド人「テロリスト」がどう描かれるか、という視点で、様々な映画を見ていくと、とても面白いでしょう。卒論のテーマにもなりそうです。
映画と政治は、密接不可分です。波津ゼミの国際問題研究会メンバー及び、メディア研究会メンバーは、この映画見て下さい。
カンボジアの村で温鉄軍『中国にとって、農業・農村問題とは何か?―<三農問題>と中国の経済・社会構造』を読む
いまグローバル資本主義が百姓世界を飲み込み、中国でも「土地なし農民」が増えている。「土地がない」ばかりでなく、「仕事がなく」「社会保障がない」「三ない農民」が大量に輩出しているともいわれる。そのグローバル資本主義の先頭に立つのがいまの中国でもある。足もとで「土地なし農民」を作り出した中国資本主義は、アジア近隣諸国に押し出して、そこでも百姓世界を壊し、土地なし農民の大量生産を始めている。メコン川下りの旅で見たアジア百姓世界の解体とその背後にある中国資本主義の存在という現実に、温鉄軍「三農問題」はどう対峙するのか。この書評執筆のために旅先で読み込もうと、荷物にこの分厚い書物を詰め込み、カンボジアの田舎町のホテルの薄暗い明りの下で本書を広げながら考えたのは、そのことだった。
ー解体するアジア小農
東南アジア最大の大河メコンを下りながら流域の村々を訪ねる旅をはじめて4年になる。2008年は中国・雲南省から北タイへ入り、2009年はラオスを北の山間地帯から南部の都市パクセイまでを歩いた。そして2010年、パクセイから始めて陸路国境を越えてカンボジアに入り、メコンの流れに沿って村を訪ね歩きながらトンレサップ湖に向かった。中国、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れるメコン流域で、川の恵みをうけてくらす人びとは5000万人といわれる。その多くは農漁民だ。アジアの村を歩く二〇年の旅の集大成のつもりで始めたこのメコン下りで見たものは、農をなりわいとしてくらす百姓という社会階層が丸ごと消えていく、そんな光景だった。そして、その背後には中国の大きな影があった。
中国と国境を接するラオス北部では、村も農家の暮らしも生産も、もろに中国の影響下にあった。雲南省から来た業者に勧められて、村ごと裏山や畑をゴム園にした少数民族の村を訪ねた。中国から買い付け業者がやってきて生産を奨励、できたゴムを中国に運ぶ。ラオス政府と契約して50年間の契約で土地を確保し、ゴム園を始めた中国企業もある。ゴムを中国に売り、コメを中国から買う農民も出始めているということだった。ある村でスイカを路上で売っている行商の農民に出会った。中国の業者と契約栽培でスイカを始めたが、一定の品質以下のものは買い取ってくれないので、こうやって行商で売っているという話だった。
カンボジアはもっとすさまじかった。陸路をラオスからカンボジアに入ると、ここでは中国からの資本進出で設立された企業によるゴム、サトウキビなどの大農園が動き出していた。政府が許可した土地のリース契約の期間には99年というものもある。その土地で耕作していた農民はわずかな補償金をもらえたらいいほうで、なんの補償もなく土地を追われるケースも多い。中国の農地進出は近隣諸国だけでなく、アフリカ辺りでも顕著である。そしてそこには必ず土地から排除される地元農民がいる。
中国はいま巨大な矛盾が渦巻く小宇宙の観がある。まるで世界の矛盾の発信地のような中国だが、その中心にあるのが農業問題なのだということが、本書を読むとよくわかる。いまアジアの近隣諸国あるいは遠くアフリカの村で起こっていることは、中国農業問題の矛盾の輸出なのではないか、そんな問題意識で本書を読んでみた。
ー三農問題と百姓世界
本書の著者温さんは、現代中国が抱える矛盾の所在を都市と農村の二元構造社会」に求める。
「二元構造内部の土地と農村の対立矛盾とは、人口と資源とのバランスが緊張状態にあるところで、また短期的に工業化を完成させたプロセスが残したもので、中国社会における経済発展を制約する主要な体制矛盾である」
温さんは「改革」以前の中国の体制を「国家資本主義」ととらえる。国家資本主義のもとでの原初的蓄積過程とは、農村からの資源や収穫物の吸い上げと再配分に他ならなかった。その過程で、中国史上一貫して「コミュニティーの自治」として行われてきた「農村の社会的管理」が排除され、「政府のコントロール」が「農村に末端」に達する。こうして達成したのが、農村の膨大な労働力を無償で動員して社会資本を作り上げる「中国ならではの原初的蓄積」であった。その上に出てきた「改革・開放」は、土地を各戸に分配し、合作社が持っていた工業資産は株として分けた。これら一連の農村改革は「政府の農村と農業からの撤退」であったと温さんは社会科学院農村研究所のシンポジウムで報告し、論議を巻き起こした。2003年のことである。こうして農村から都市への巨大な人口移動が始まった。2004年になって政府は農業免税を打ち出し、さらに「新農村建設」を掲げて農村の社会資本充実に乗り出す。これは都市でだぶついた過剰資本のはけ口を農村に求めたことと、農村の市場化を狙ったものだったと私自身は理解している。
こうしてますます矛盾の塊となった中国農業・農村問題を、温さんは三農問題としてとらえる。三農問題とは,中国においては農民の抱えている問題は、農民,農村社会,農業の問題を統一的・総合的かつ重層的ににとらえなければ、問題の所在も本質も、解決策も見えてこないという提起である。1996年、温さんは「『三農問題』の世紀的省察」と題する論文を書き、いま(自分たちが直面しているのは)「農民の生計、農村の持続可能性、農業の安定」のいわゆ「三農問題」だと提起、「東アジア国家がもし、米国のように数百ヘクタールも所有する農場主(farmer)のあり方を私たちのように兼業化した小農経済を条件とする零細「農民」に当てはめ続けるなら、このような基本的概念の取り違えは必然的に一連の理論と政策との間のひどい齟齬を招くことになるだろう」と述べた。
この取り違えを1960年以降50年間続けてきたのが日本の農業政策である。小農・兼業・どんぶり勘定という百姓世界に、規模拡大・効率という論理を持ち込み、世界市場で勝てる“強い農業”という妄想に官も経済界もメディアもはまり込んで思考停止に陥っている状況をみると、温さんの「三農」という提起がいかに卓見であるかがわかる。
ー「三ない農民」の激増
いまグローバル資本主義がその百姓世界を飲み込み、中国でも「土地なし農民」が増えている。「土地がない」ばかりでなく、「仕事がなく」「社会保障がない」(『季刊ピープルズプラン研究』での武藤一羊氏のインタビューに答え)「三ない農民」が大量に輩出しているともいわれる。そのグローバル資本主義の先頭に立つのがいまの中国でもある。足もとで「土地なし農民」を作り出した中国資本主義は、アジア近隣諸国に押し出して、そこでも百姓世界を壊し、土地なし農民の大量生産を始めている。メコン川下りの旅で見たアジア百姓世界の解体とその背後にある中国資本主義の存在という現実に、温鉄軍「三農問題」はどう対峙するのか。この書評執筆のために旅先で読み込もうと、荷物にこの分厚い書物を詰め込み、カンボジアの田舎町のホテルの薄暗い明りの下で本書を広げながら考えたのは、そのことだった。
中国人民大学教授で、同大学農村農業発展学部各部長の要職にある温さんは、単なる学者ではなく、すぐれた実践家でもある。2003年からは、「協同」を基礎に新しい農村の建設を目指す「新郷村建設」の試みを展開した。2006年に、ピープルズ・プラン研究所企画でその現場を訪ねる機会があった。
温さんの運動の拠点であるジェームズ・イェン農村復興学院を河北省に訪ね、そこに集う若いボランティア青年たちと話し合うこともできた。「穏やかな改良」をめざすこの運動で、温さんが掲げているのは、「『グローバル資本化』のもたらす大転換の中で、大多数の中国人が生きる郷土中国の安定を維持する」ことだ。人々が安心して生きることができる農村建設、と言い換えてもよいと思う。
聞くところによると、当初は政府の「新農村建設」政策の流れに乗って順調に進んでいるかに見えた「新郷村建設」も、やがて政府から警戒されるようになった。農村に過剰資本を注ぎ込み、都市・工業の市場としようとする新農村建設と、人びとが生きる場としての農村づくりという穏やかではあっても社会改良をめざす温さんの実践とは、やはり相いれないものがあったのだろう。そして今、中国資本主義は国境を越えて近隣諸国の村を過剰資本の投資先として取り込んでいる。こうなった以上は、温さんの「新郷村づくり」も、国境を越えて、解体危機にあるアジアの百姓世界とつながってほしいと思う。(日刊ベリタより)
『山びこ学校』を読み返す 改めて「貧しさ」と「豊かさ」を考えてみた
暴走中の原発がある福島県浜通りの村々を語るとき、多くの人が「貧しさが原発を呼んだ」という。そうした言葉の背景には、成長や開発、モノとカネがあることが「豊か」なのだという価値観がある。その価値観を疑うことからしか、原発被災地を含む地域の再構成はありえないのではない、という問題意識にずっととらわれている。敗戦直後の東北のムラの「貧しさ」を子どもたちの目で記録した『山びこ学校』を改めて読みなおしてみた。
『山びこ学校』の初版は1956年に青銅社という出版社から出た。すぐにベストセラーになり、五年後百合出版から新版が出ている。その後角川文庫に収録され、いまは岩波文庫で読める。岩波文庫に入ったのは、敗戦50周年にあたる1995年である。現在までに18刷りを数えている。
わたしがこの本に出会ったのは四国山脈の真っ只中の小さな小学校の4年生のときであった。戦争未亡人となった母親が子ども三人を連れて親を頼ってふるさとに帰り、地元の小学校に職を得て養護教諭をしていた。その本棚にあったのを見つけ、引き出してページをめくった。愛媛県上浮穴郡参川村西小学校。村も学校も統廃合で今はない。村は県都松山市からバスで半日、県道が尽きるとことにあり、そこから山道を歩いて山越えすると高知県に入る。山また山の山村で、猫の額ほどの耕地しかなく、村人は炭焼きや国有林からの木出しなど主に山仕事で暮らしをたてていた。
母親の本棚から引き出した本は、山形県の農村の中学二年生の作文集で、山形弁にルビがふってあって、とても読みにくいものだった。それでも活字に飢えていた子どもだったわたしは、折りに触れてページをめくっていた。最初のページにあった版画と短い詩のような言葉が印象的でいつまでも頭に残った。葉を落とした雑木が何本か手前に書かれ、その後ろに民家があり、何かを背負った人が小さく見える。そのすべてが雪に埋もれている。そして、「雪がコンコン降る/人間は/その下で暮らしているのです」という文章が添えられていた。
山形県がどこにあるかも知らなかったし、雪の下での暮らしも想像できなかったが、拾い読みするこの本に書かれた人たちの暮らしの、なんと我が村と似ていることか、そんな驚きもあった。山形県山元村。いまは上山市になっている山間の村の中学校に師範学校をでたばかりの新任の先生がやって来た。この本の編者無着成恭である。
彼は、東北の山村の子どもたちをとりまく状況をありのままに書くことで、社会をきちんと、客観的につかみ取る力を子どもたちにつける綴方(つづりかた)教育を社会科の授業に取り入れる。戦前、多くの弾圧にさらされながら各地で教師たちによって取り組まれた生活綴方運動の流れを受け継ぐ新しい時代の若い教師の実践であった。
炭焼き、炭出し、縄ない、わらじづくり、葉煙草のし、畑仕事、薪とり、わらびとり、と子どもたちは実によく働く。いまなら確実に児童虐待といわれかねないほどだ。そうしないと一家は食べていけないからだ。中学生ともなると一人前の働き手として扱われ、仕事の合間に教科書でも開いていようものなら、たちまちかみなりが落ちてくる。そんななかで、子どもたちは生き生きと日々の労働を、父のとこ母のことを、遊びを、父が死んで一家離散するようすを、都会に働きに行った姉が病気になって死んだ事を、自分の言葉で書いている。
戦後まもなくの東北農村の貧しさを、子どもの目を通して人びとは知り、感動して、この本はベストセラーになった。この本に収録された作文を読んで思ったのは、とても冷静にきちんと物事の本質をとらえている子どもたちの目である。炭焼きを木切りから売るところまで書いた共同制作の作文がある。炭の原木は30年間隔で伐るのが、山にもよいということで、ずっとそれが守られてきていた。ところがそれができなくなった。親たちの会話は紹介される。
「もう切る山がないなあ。三十年輪伐が戦争でめちゃくちゃになってしまった」
「そうだそうだ。なんぼ若くとも、十五ねんぐらいの山でも切らんなねな」
「切れば下流では洪水がおきるというし。切らねば俺たちが死んでしまうしな」
切った木をだし、割り、小屋をかけ、炭を焼き、釜から出し、俵に詰め、どんな子どもでも二俵は背負い、山を降りた。そして朝早く起き、背中に背負ったりそりに乗せて、町まで炭を売りに行く仕事にも、子どもたちは参加した。
「協同組合に入れると安いからなあ。自分でひっぱっていくと、二十円ずつもうかるからなあ。それに現金がすづてにはいるのだもの」
「農業協同組合がもっとしっかりしていればなあ。統制がとけるとすぐ組合よりも商人が五円位高く買ってくれるので、みんなが自分の組合をさておいて、商人の方だけに持って行くようになったのだ」
山びこの子どもたちは生活を記録するなかで、社会の現実や矛盾をしっかりとつかむ。無着先生の学級の級長だった佐藤藤三郎さんとは、農業記者になった1963年にお会いし、それ以来親しくさせてもらっている。彼は、定時制の地元農業高校を出て、百姓として生き抜き、たくさんの本を書いて、村から百姓の感じ、思想を発信してきた。よく光る眼も、社会を見据える論理の確かさも健在である。(日刊ベリタより)
波津先生の「しばしのお別れに、映像をいくつか紹介します」
(大妻女子大でライフデザインを教える波津博明先生の8月6日付メールを紹介しています。)
10時間後には、東京を発っているので、これがしばらくのお別れ前の最後のメールになるかもしれません。
なお、月曜からの番組案内は、無理なので、25日までは、ご自分で番組表などをチェックして、観賞ないし予約して下さい。そのかわり、というか、注目すべき映像を何本かご紹介して、お別れとします。
①フジテレビの報道系番組が伝えた、現地作業員の過酷な労働条件
これは4月半ばくらいと思います。東電、政府が現地の作業員を理不尽なほど過酷な条件でこき使っている現実は、週刊現代や、東京新聞など一部の新聞・テレビでも伝えられましたが、映像がない。その中で、出色はフジテレビ。福島原発で産業医を務めていた、愛媛大学の谷川武教授が撮影した動画を流したのです。動画は極めて珍しい。そもそも、日本と世界を放射能地獄から救うために必死で闘う作業員の様子そのものは、なぜか一貫して、東電も政府も隠し続けました。何のために?放送時点からさらに3ヶ月経ちました。今や炎熱地獄です。今の作業環境はどうなのか。今では、メディアは、さらに健忘症を強めたのか。
http://www.youtube.com/watch?v=srGWn1i3ga0&NR=1
②原発労働者といえば、写真家の樋口健二さんは、克明にその実態を記録し、被曝で死んでいく労働者を追っていました。岩波ジュニア新書から出した「これが原発だ!」は、今年の2年生の授業で選択課題図書の1つに指定しました。その樋口さんが語り手として、90年代に、英国の「チャンネル4」が放送した「被曝する労働者たち」。そのyoutube映像を以前に、紹介しました。
http://video.google.com/videoplay?docid=4411946789896689299#
③しかし、外国のメディアは今も、下請労働者の悲惨な現実に敏感です。以下は、今回の事故後のドイツWDR放送のニュース番組。原発労働者について「東電は、ホームレスなどを、使い捨て労働者として利用している」と批判しています。もっとも、現地には、東電社員や自衛隊なども多数入っていましたから、全部が「ホームレス」と言うのは言い過ぎでしょうが、実際、身寄りのない、貧しい人々を金でつって危険な作業に従事させるというのは、電力会社が40年以上やり続けてきたことです。
http://www.youtube.com/watch?v=GRPzQHfOVPs&feature=related
④原発事故について、放射線の専門家である児玉龍彦東大教授が、国会で証人として発言した際に用意したパワポが、ネットで見られます。急いでいたらしく、誤字脱字や説明不足が目立ちますが、次々めくると、いろいろなことがわかります。
http://www.slideshare.net/ecru0606/ss-8725343
⑤上の児玉教授が、ジャーナリストの津田大介と行った対談のユーストリーム画像です。これは先に紹介しましたので、2度目。インタビューの中で、児玉先生は、②のパワポも一部使っています。1時間以上の長さで、中には、専門用語もけっこうでききますが、ずっと見ていると、おおよそのことはわかります。実に興味ふかいインタビューです。
http://www.ustream.tv/recorded/16442790
⑥児玉先生のまじめな話に続いて、推進派の恐るべきふまじめさがわかる映像。原子力安全委員会の斑目委員長の本音発言の映像です。「なぜ原発がこんなに広まったのか」・・・斑目(まだらめ)さんによると、「原発はもうかるんだよ」。
すごいのは、「安心なんかできるわけないじゃないですか。あんな不気味なもの」「最後は結局お金でしょ」という言葉。このインタビューは、6年前。常に、「原発は絶対安全」と言い続けてきた斑目さん、本当は、「あんな不気味なもの」と思ってたんですね。
ところで、菅政権は、原子力安全保安院は、経産省の原発利権共同体の一部になっているので、保安院を安全委員会と一緒にして独立させる、と言ってました。最近は環境省の下におくと言いだしましたが、保安院同様、原発推進一点張りでやってきた安全委員会も、原発利益共同体の強固な一部でしょう。原発批判派なんて、委員には1人もいないんだから。メディアは、なぜ安全委は保安院と同じ穴のむじなだって、はっきりいわないのか。それはともかく、その安全委の斑目委員長の発言をどうぞ。事故が起きた今、彼は6年前の自分の発言をどう総括するのか・・「まだらめ」さん、事故後は、あまりのいい加減さに、「でたらめ」さん、とあだ名がつきましたが。
http://www.youtube.com/watch?v=zKwOxJuMhPs
波津先生の「是非お勧めの本2冊」

原発に加えて、次なる地震。今や、以下の2冊は必読だと思います。ぜひ読んで下さい。今後ずっと、役に立つと思います。広瀬さんの本は集英社新書、山村さんのは宝島社です。広瀬さんは、東京女子大教授で、専門はリスク心理学。山村さんは、リスク・マネジメントの専門家です。どちらも読みやすいですが、山村さんの本は、特に読みやすく、日本人独特のリスク感覚の欠如を鋭く指摘しつつ、危機対応を説くので、一気に引きこまれます。
卒業生の皆さんは、3年生の頃、僕のリスク・マネジメントの授業を受けたわけですが、いまや、事態は一変しました。去年までは、地震や津波もやりましたが、主に、雇用とか格差、医療危機など、国家が作りだすリスクが、後半おもなテーマになり、課題図書もそれに沿ったものでした。 今は、とにかく地震と原発です。 以下の2冊のうち、山村さんの本は、前期、3年生の生活のリスク・マネジメントの授業で、課題にしたものです。
4年生の場合、後期の「地球市民論」で課題にしようかとも考えていますが、とにかく。さきのことはともかく、夏休み、ぜひとも読んで下さい。卒論も大事ですが、命はもっと大事です。
卒業生には、「課題」にできないのが残念ですが、だまされたと思って、読んで下さい。2冊はとても無理、という忙しい人は、山村さんの本だけでもいいです。



