開戦から7年、「イラク戦争なんだったの !?」 21日、市民団体が検証シンポジウム
イラク開戦から7年がたった。「あの戦争は何だったのか」を問う声が世界で高まっている。派兵の先頭に立った英国、オランダでは、昨年イラク戦争を検証する独立検証委員会が設置された。そうした動きの一環として日本ではNGO、市民団体らが集まり、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」を発足させた。その第一弾となるシンポジウムが3月21日、都内で開かれる。
2003年3月20日、ブッシュ米大統領(当時)はイラク攻撃を強行した強行氏は強行されたイラク戦争。世界で反対の声が高まり、日本でも盛り上がる戦争反対の世無視し、当時の小泉首相が戦争支持を表明し、自衛隊のイラク派遣に踏み切った。
あれから7年、あの戦争の検証を求める動きが世界に広がり、日本でも全国各地でそうした動きが出てきている。その中心となっているのが昨年11月、日本の市民組織、NGOなどが集まって立ち上げた「イラク戦争なんだったの!?―イラク戦争の検証を求め るネットワーク」。
この動きの呼応する国会議員も現れ、80人余りが「イラク戦争検証を行うべき」との議員署名に賛同。岡田外相も国会で、検証を行いたいとの意向を明らかにしている。
同ネットワークは、イラク戦争の検証は、イラク戦争の是非だけでなく、日米同盟や憲法、国際社会の中での役割、そして私達の税金の使われ方など、今後の日本のあり方を問う上でも、重要ではないでか、と提起している。
今回開かれるシンポジウムは、その活動の第一弾として、日本での検証。を実現するためには何が必要か?」「検証すべきことは何か?」「検証を経て私たちは何を求めていくのか?」などを、各分野の専門家とともに議論することを目的にしている。
7年前のあの日、少しでも「おかしい」と感じた方々、昨年の 政権交代で何かが変わるかも、と思った方々、ぜひ、本シンポジウムにご参加下さい。
【日時】2010年3月21日17時から19時半
【場所】明治大学リバティータワー1F・1012教室
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
(千代田区神田駿河台1-1)
【参加費】800円
【主な内容予定】
・イラクの現状
(佐藤真紀/JIM-NET、高遠菜穂子/イラク支援ボランティア)
・国際法の観点からのイラク戦争の問題点
(東澤靖/日弁連国際人権問題委員会委員長、HRN理事)
・イラク人道復興支援の問題点
(高橋清貴/日本国際ボランティアセンター)
・イギリスとオランダのイラク戦争検証委員会について
(スピーカー交渉中)
・自衛隊派遣の問題点
(川口創/イラク自衛隊派兵差止訴訟弁護団)
【問合せ&詳細】
「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」
HP:http://isnn.tumblr.com/
メール:regretiraqwar☆gmail.com(☆は半角@に換えてください)
電話連絡先:090-9328-9861(志葉)
日刊ベリタより
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201003171324213
「紙の時代」終焉の雑感+有料化と英新聞界(下)
もう、紙の時代は終わりに近づきつつあるのかなー?そんな思いがひしひしと感じられる今日この頃だ。いや、本当に「紙の時代」が終わりに近づいているーというのはやや不正確な言い方で、紙の発行物に書いて・これを制作してお金を得る、ビジネスにする、という時代が終わりに近づきつつある、というのが正しいのだろう。
私は紙媒体に書くことによって主な収入を得ている。いくつかの出版社は厳しい状態にあって、某媒体の原稿料が若干削減となった。この削減自体は大きな影響とはならない。しかし、これが雪崩の始まりとみるのが正しいのであろう。そのうち、「はい、これでこのメディアは終わりになりました。最後の報告です」といって、ペンを置く・・・ということになるのかもしれない。
「電子出版があるさ」とは言っても、それがすぐ紙媒体の代わりになるには若干時間がかかりそうであるし、これを待つ時間は私には残されていないかもなと思う。
ニュースサイトのJAN JANが終わった(休刊かもしれないが)。いろいろな理由はあるだろうが、これも一つの時代の終わりであろう。すっかりメディア環境は変わってしまったのだから。英国のメディア話も、数年前までは定点観測がない感じだったが、今は、米国の話が中心だけれど英国もカバーする「メディアパブ」さんがすごい。そのほかにもたくさんある。メディアのニュースと言えば、テクノロジーのニュースになってしまったのも、大きな変化の1つだろう。(メディアの話がトピックになること自体も。)
それに、「真実を突く」というメディアの機能だって、たくさんあるネットサイトのレポートがはるかに良い仕事をしてしまう場合もある。ジャーナリスト佐々木俊尚さんのツイッターから拾ったものだが、
「 中国って単純じゃないよ」|増田にゃんねるβ http://masuda.livedoor.biz/archives/51403264.html
こんなに、かみしもを着ている雰囲気がない・本音が出ている・気取らないレポートがネットで読めてしまうのだ。感心してしまったーこんな書き方は、普通、原稿を書いてお金をもらっている人、いわゆるプロの人にはなかなかできない。
・・・とあれこれ思いながらも、英新聞を読んだりテレビを見ては面白がり、これまた感心する毎日だ。船が沈むまで、とりあえずは報告を続けたいと思っている。
新聞協会報の3月16日付に、有料化と英新聞界について書いた。以下はそれに若干補足したものである。
コンテンツ有料化と英新聞界(下)
「サイト上のニュース閲読は無料」というこれまでの英国の読者の期待を裏切らずに、インターネット・ニュースの配信から収入を得るにはどうするか?英新聞界が目を付けたのが、ネットが本格的に使えて、高度な情報端末として機能する携帯電話、いわゆるスマートフォンや電子書籍端末だ。
無料のイメージが強い自社ウェブサイトから、課金の仕組みが既に整っているプラットフォームに注目することで、各社は仕切り直しをはかる。
具体例が、アイフォーン向けに提供する独自の閲読アプリだ。アプリは原則無料だが、ガーディアンが2・39ポンド(約326円)で有料版を販売している。昨年12月中旬の発売から2か月で約10万1千回、ダウンロードされている。3月上旬現在、有料ニュース・アプリのランキングでトップだ。このほか、テレグラフはクロスワード、スポーツ、漫画など、それぞれの有料アプリを販売している。一方、BBCは商業部門BBCワールドのニュースの閲読用に0・59ポンドで「BBCニューズモバイル」アプリを販売中だ。
今後、テレグラフのように、人気コンテンツを有料切り売りする方法を他社・他局が追随する可能性は大だ。
米アマゾンの電子書籍端末キンドル上では、英新聞6紙が購読可能だ。購読料はフィナンシャル・タイムズが27・99ドル(約2525円円)、インディペンデント、タイムズ、テレグラフ、デーリー・メールの各紙が22・99ドル、ロンドン・イブニング・スタンダードが9・99ドルとなっている。
4月末発売予定の米アップル社の電子書籍端末「iPad(アイパッド)」への各紙の参加方法はいまだ明らかになっていないが、アイパッド上のアプリを開発中の2ergo(ツーアーゴ)社のコリン・マッカフリー氏は、アイパッドは出版業にとって「大きな救い」になると述べる(ガーディアン、2月15日付)。紙媒体のコンテンツをネット向けにまったく違う形に編集する必要がなくなり、「紙面のデザインをそのまま」載せられる強みがあるからだ。
有料テレビの契約料に新聞サイトの閲読を組ませる案も浮上している。例えば衛星放送BスカイBの有料契約者数約1200万人を対象に、毎月の契約料に少額の追加料金を上乗せする。これで複数の新聞サイトのニュースを無制限に閲読できるようにする。読者からの抵抗が予想されるサイト閲読有料化を有料テレビ契約と抱き合わせ、パッケージとして販売する案は一理あろう。各社の知恵比べの時代となった。(*個人的に、この案は非常に頭がいい感じがするー。もし実現したら、だが。紙の新聞を読まない若者層だって、テレビは見ているわけである。そこを狙っているのである。「知らないうちに払っている」というわけだ。ニクイ!あるいはズルイ!)
「英国メディア・ウォッチ」より
新聞の関係性+コンテンツ有料化と英新聞界(上)
新聞社のウェブサイト有料化導入に関する議論が百出だ。アップルのアイパッド(iPad)の発売が英国(米国以外の世界数か国)では4月末となり、電子端末機器を通じての有料化にも大きな期待がわいている。このトピックは非常に話の流れがはやい。先日も、ニューヨークタイムズ(2011年から有料化導入予定)が、書評記事を有料配信するというニュースがあったばかりだ。
英国の新聞について言えば、以前はあった大きな抵抗感が今はなくなったのが、不思議と言えば不思議。「有料化もありだぞ」という論が随分と出たからだろうか。
このトピックに関して、新聞協会報に書いた記事を下に貼り付けようと思うのだけれど、その前に、協会報の3月2日付におもしろいコラムがあったので、紹介したい。
「週刊メモ」という1面下のコラム。マーケティング調査会社MIFTの調査を紹介している。この中で、MI世代(20-34歳男性)は「活字を読むの好き」だが、新聞をあまり読まないという。新聞離れの理由は「料金がかかる」「読むのに時間がかかる」「他のメディアから得られる情報で足りている」「余計な情報が多い」=つまり、新聞を非効率な情報源ととらえているからのようだ。ところが、新聞を読む人に聞くと、新聞を効率的な情報を得られる存在と見ていた。
筆者は、「欲しい情報だけを効率的に検索してくる、そんな情報行動に親しんだ若者が閲読習慣から離れ」たことに目をつける。つまり、効率良い情報源と見なされたら、対価を得る可能性がある、と。
最近、私は新聞のことを考える時、そして、大人気のソーシャルメディアを考える時、「関係性の高さ・低さ」(relevance 、irrelevance)という言葉が浮かんでくる。
ソーシャルメディアが何故人気になったかの分析は、既に詳しい人がたくさんいらっしゃるのだけれど、私はある情報が「自分に関係あるか、ないか」ではないかと思う。「自分の」趣味、発言、友達、ネットワークー。よく、「つながりたいという感情があるから、人気が出た」と言われるけれど、これを私は、人と人とが手をつなぐ、つまり、広い意味の友人を作ることととらえていたので、ピンとこなかった。
しかし、自分に関係のあること、つまり身近に感じられることだと、人は興味を持つものなのだと思う。例えば、事件・事故のニュースにしたって、自分が行ったことがある場所や、住んでいるあるいは通勤している場所・建物だったら、興味の具合がグンと違う。
自分に関連することが書かれてある新聞―。主義主張に同感できて、その新聞独自の切り口による世情分析がある新聞―。「私の」新聞と言える新聞―。それならお金を払うだろうな、と思う。
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以下は新聞協会報(日本新聞協会発行)3月9日付の掲載記事に若干付け足したものである。
コンテンツ有料化と英新聞(上)
インターネット上の記事を原則無料で提供してきた英新聞界が、有料化導入志向を強めている。昨年8月、米メディア大手ニューズ・コーポレーションが英新聞数紙を含む傘下の新聞サイトに有料閲読制を取り入れると宣言したのが一つのきっかけだ。英各紙サイトの有料化への動きと、新たな収入源になると期待がかかるスマートフォンや電子書籍閲読端末への取り組みに注目した。
英国の新聞社サイトは、有料で電子版を提供する経済紙フィナンシャル・タイムズを除き、原則として過去記事も含めて無料でニュースを提供してきた。テレビ受信料で活動費をまかなうBBC(英国放送協会)が無料で提供するBBCニュースの存在やグーグルニュースをはじめとするニュースアグリゲーターサイトの人気が背景にあった。
しかし、メディア環境の激変と不景気による広告収入の縮小から、有料化が現実味を帯びてきた。ニューズ社による傘下英紙サイトへの有料制導入宣言や、米ニューヨーク・タイムズの有料化案も刺激となった。
大手紙の中で有料化導入を明確に表明しているのは、ニューズ社発行のタイムズ、サンデー・タイムズ、サン、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙。早ければ4月末にも導入予定だ。各記事ごとに課金するマイクロ・ペイメント方式ではなく、24時間使える「一日パス」や月額購読料の徴収を検討している。
ガーディアン紙は有料化反対派だが、同紙のサイトのコンテンツの1つで、デジタル・メディアにかかわる情報を配信する「ペイドコンテント」を年間249ポンド(約3万3800円)で提供する案を視野に入れる。
テレグラフはニュースの有料化を現時点で想定せず、サイトを使っての物品の販売や特定の趣味を媒介とする「有料会員制クラブ」の会員になってもらうなど、eコマースの開発に力を入れている。
一部の地方紙ではすでに試験的に有料化が始まった。昨年11月末からは286の地方紙を発行するジョンストン・プレス社傘下の新聞6紙がウェブサイトの有料購読の試験提供を始め、220の地方紙を発行するティンドル・ニューズペーパーズ社は、昨年夏の試験提供が好評だったため、40紙のサイトで有料制の導入を計画している。
欧州他国では、独出版社アクセル・シュプリンガーが傘下の2紙で2月から、また仏フィガロ紙も同月から有料制を開始した。オランダ、デンマーク、ノルウェーなどで300紙を発行するメコム社も近く導入予定だ。いずれの場合も、無料(フリー)記事を残しながら、プレミアム・コンテンツは有料という「フリーミアム」方式をとる。
有料会員サイトのノウハウを提供するサブハブ・サイトの経営者エバン・ルドウスキー氏は、「有料の壁」導入には有料・無料の二者択一ではなく、無料記事と有料記事の「バランスを上手にとる」ことが成功の鍵とする(ペイドコンテント、2月22日付)。(「下」につづく)
こんな話も:
ニューズ社の幹部が、ペイウオールと無料は共存できる、と発言
News Corp executive: paywalls and free model can co-exist
http://www.guardian.co.uk/media/2010/mar/10/news-corp-paywalls-coexist
英名女優ジュディ―・デンチが演じる「夏の夜の夢」-新劇場は成功するか?
ロンドン発ー日本でもファンが多いシェークスピア劇。妖精パックが活躍する喜劇「夏の夜の夢」に、英国の名女優ジュディ―・デンチが女王役で出演中だ(3月20日まで)。デンチの姿を一目見ようと観客が駆け付けたのは、オープン後まだ日が浅い、ロンドン南部にあるローズ・シアターだ。劇場開設前、資金不足などトラブルに見舞われ、地方自治体が巨額資金を投入する羽目になったため、地元民の反発が根強い。新築の木の匂いがいまだ新鮮な劇場内で喜劇を満喫しながらも、一体いつまでオープンしていられるのかなと一抹の不安も感じる一夜となった。
―満席の劇場
午後7時過ぎ―。ロンドン南部のキングストンにある、一昨年にオープンしたばかりの劇場「ローズシアター」に続々と観客が集まってきた。舞台の外にあるバーは、座席に着く前の一杯を楽しもうという人で一杯で、体を移動するのもやや困難なほどだ。約900席のローズ・シアターは3月20日まで、すべての席が売り切れだという。
それもそのはず。英国で最も著名な女優の一人と言われるジュディ―・デンチが、シェークスピアの喜劇「夏の夜の夢」に出演しているからだ。演劇に詳しくない人でも、米映画「007」シリーズで、情報機関のトップ「M」役を演じている短髪の女性といったら思い出すだろう。映画「シェークスピア・イン・ラブ」ではアカデミー賞の助演女優賞を受賞している。
制作は演劇、オペラ、映画界で幅広い経験を持つ、ピーター・ホール。ホールは、シェイクスピアの生地、ストラトフォード・アポン・エイボンを拠点にする劇団「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」の創始者でもある。芸術監督(兼劇場の運営者)はこれまでに数多くのシェイクスピア劇を手がけた、スティーブン・アンウィンだ。
そうそうたるメンバーが参加するローズ・シアターだが、オリジナルの同名の劇場はテムズ川南岸バンクサイドにあった。ここでは16世紀、シェークスピアの初期の作品が上演されていた(現存していない)。
舞台の幕が開くと、まもなくして、デンチ扮する妖精の女王タイターニアが登場する。思わず観客席からため息がもれる。映画の画面でしか見たことがないデンチの生身の体がすぐ目前にあるのだ。スターの威力であろう。
物語はアテネの街と近郊の森で展開する。アテネとは言われるものの、実際は戯曲が書かれた16世紀のイングランドの様子をほうふつとさせる。女王タイターニアも後の絵画などで見られるエリザベス女王にそっくりだ。年老いた女王が妖精たちにかしづかれ、魔術にかかって、奇行に至るというのも、エリザベス女王を暗喩・笑っているようにも見える。エリザベス女王がこの芝居を観たかどうかは不明だ。
登場人物は、貴族の男女や職工たち、妖精の王オーベロン、そのお仕え役の妖精パック。オーベロンがパックを使って、登場人物たちに「目を覚ました相手にたちどころに恋をする」魔法をかけ、悲喜こもごものドラマが生じてゆく。
「あー、私の愛する人よ!」デンチ扮する女王が、巨大な馬のぬいぐるみをかぶった職工ボトムをいとおしそうに抱きしめ、会場から笑いが漏れる。パックが魔法を間違えて、二人の男性が一人の女性に同時に求婚する羽目になり、ドタバタ劇が展開する。舞台の前には「クッション席」があって、思い思いのクッションを持ち寄った子供たちが親と一緒に座り込む。椅子に座るよりはやや疲れるが、舞台にぐっと近づけるので、ドラマの迫力が増す。
劇中劇の中で、剣を自分の体に刺して死んでゆく職工が、命が尽きる様子を大げさにスローモーションで見せるので、子供たちも大人も大笑い。私も久しぶりに大声をたたて、思い切り笑ってしまった。
芝居が終わり、観客は会場を出て最寄りの駅キングストンまで向かう。やや遠い。速足でも15分はかかろうか。
キングストンはロンドン南部と言っても、郊外という表現が近い感じがする。ロンドンは中心部を「ゾーン1」として、中心部から遠ざかるにつれて、「ゾーン2」、「ゾーン3」と分けている。キングストンはゾーン6だ。はたして、わざわざここまでロンドンの他の地域からやってくる人はどれだけいるのだろう?そんな疑問が思わずわいてしまう。実際、一緒に劇を鑑賞した外国報道陣の何人かから、「遠いねえ」という声を聞いた。
一体、誰を想定観客としているのだろう?
上演前、芸術監督スティーブ・アンウインと報道陣の質疑応答でも、この点が話題になった。「ローズシアターはどこの観客をターゲットにしているのか?例えば、ここをロンドン中心の観劇街ウェスト・エンドの1つ、と見なしているのか?」と聞かれたアンウィンは、一瞬、「うーん」と言葉に窮した。
もちろん、ロンドン中心部からも、近辺からも来てほしいのが本音で、アンウインは特定の観客を対象にしているわけではないと説明する。
キングストンに劇場を作ろうというアイデアが出たのは4年前。2008年1月のオープンまでに時間がかかったのは、アンウインによれば、「英国らしいいろいろなことがあったから」。つまり、資金がなかなか集まらず、集まったと思ったら、最初の算定が正確ではなかったので、見落とし部分(照明費用など)が出たことを地方紙が報道している。その資金繰りの甘さは地元メディアで散々批判された。結局、キングストンの地方自治体と近場にあるキングストン大学が不足資金を提供しオープンにまでこぎつけたが、地元民の間では現在でも、「税金の無駄遣い」と批判が根強い。
「この劇場は非常に安くできたんですよ!」とアンウイン氏は報道陣に誇らしげに語った。「一体いくらだったんでしょう?」と聞いてみた。「うーん、細かい数字は分からない」―。
芝居のプログラムとともに、デンチからの「募金願いの手紙」を渡された。「今日もし募金できなければ、どうか連絡先を残してください」と書かれてあった。キングストン自治体と大学からの資金は運営コストの半分を満たすだけのようなのだ。後半分はチケットを売って埋めなければならない。
900席を半分も満たない日がある時、アンウィンは「落ち込む」という。「しかし、これを苦にして自分の手首を切って自殺するよりも、400人は来たんだな、と思うようにしている」。
劇場オープンの3か月前、総支配人的立場にあったピーター・ホールが辞任。頼みの綱として声をかけた先がアンウインだった。資金繰りの状態などにさぞ驚いたに違いないが、それは口に出さなかった
どんな劇場にしたいか、とフィンランドの記者が聞いた。「言葉を大事にしたい。芝居は言葉が一番重要。大がかりなセットやこけおどしはやりたくない。言葉の面白さを大事にしたい」。
アンウインが監督した「夏の夜の夢」は、登場人物たちがエリザベス朝のコスチュームで舞台に現れた。舞台通の知人が言うには、シェークスピア劇がオリジナルの時代の設定で上演されるのは「珍しいーほとんどが、現代風のアレンジになっている」。
とすれば、この世のアンウイン監督の「夏の夜の夢」はオリジナルの戯曲の言葉の面白さ、衣装をできうる限り大切にした演出だったのだろう。
劇場を出て、夜道を駅まで歩きながら、シェークスピアを楽しむ、子供たちの笑顔を思い出していた。さまざまな議論があっても、あんな笑顔を生み出せるのは質の高い芝居しかない。この伝統が次の世代にまでも続いていくには、確かに劇場が必要だー。スターキャスト、国際的にも知られた演出家、監督、なんといってもシェークスピア。すべてはそろっている。願わくば、地元民の熱い支持がいつか育つようにー。そんな思いで、夜道を歩いていた。(写真はノビー・クラーク撮影)
*ローズシアター、公式ウェブサイト
http://www.rosetheatrekingston.org/
【パレスチナの村から】②クスクスと難民
土壁がところどころ崩れた年代物の建物に案内された。中に入ると、白衣を着た中年の女性が大勢忙しく働き、クスクス(couscous)の食材を作っている。土間にあぐらをかくようにどっかりと座り、粉をこねる女たちは全員この地域にある難民キャンプのクスクス生産組合のメンバーだ。パレスチナでは人びとのあらゆる活動がイスラエルの占領と重なる。(ラマラにて、大野和興+上垣喜寛)
その加工施設はPARC(パレスチナ農業復興委員会)の農産加工施設のひとつ。西岸地区の中心都市ラマらから東に向かい、ジェリコの郊外にある。昨年までここはナツメヤシの実の選別と箱詰め工場だった。それが近代的な選別機の導入に伴いよそに移転、その後女たちの働き場となった。
女たちはそれまでは難民キャンプの中で集まり、作業をしていた。1948年、欧米の後ろ盾を得てこの地に建国したイスラエルは、531ヶ所の村と町を破壊して住民を追放、72万6000人がヨルダン川西岸とガザなどに避難、難民キャンプをつくった。その後も続く占領地域の拡大や土地接収で、生活と生産の場を奪われる人たちが増え続けた。
難民生活は世代を越えて続き、生存の基盤の失った結果として貧困層が多い。この加工場で働く女性たちの多くは夫を失った人たちで、クスクスの食材加工で得る収入が主な収入源となっている。
クスクスというのは家庭料理で、通常は家で作り食べる。小麦粉を捏ね、時間をかけてにひねり、捏ね、米粒ほどの粒にする。その様子は練達のそば職人のふるまいを想起させる。
できあがった粒は15分ほど蒸し、乾燥させる。女たちはそれを共同作業することで商品化し、収入源に育てた。PARCはその女たちの活動を助け、より精密な乾燥や選別の施設を用意し、販売先を開拓。訪れたこの日はイタリア向けの製品が作られ、箱づめされていた。パレスチナでは小麦はあまり生産されておらず、輸入されているが、ここで使う小麦粉は地元産をと生産も始めている。
日刊ベリタより転載
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201002061355006



