7月27日 衆院「放射線の健康への影響」 児玉龍彦・東大アイソトープ総合センター長、異例の激しい警告
(大妻女子大でライフデザインを教える、波津博明先生のメールです。)
高校時代の同窓生仲間から、27日に国会で、児玉龍彦・東大アイソトープ総合センター長が参考人として行った、たいへん厳しい証言の映像について知らされ、「若い学生たちに伝えて」といわれました。さらに続いて、僕の加盟する複数のNGOのメーリスで、同じ映像を是非見るよう、続々と会員への呼びかけが行われました。
それが、以下のURLです。児玉先生は、東大教授で、アイソトープセンターという放射線管理の総合責任者でもあります。原発の構造などを研究する原子核物理学者ではなく、放射線が人間の体にどんな影響があるかを研究する放射線学者です。いま最も知りたいことを専門的に研究している学者です。
東大の教授というと、3・11以来、何人もの東大教授がテレビに出てきて、「なにがあっても安全です」と言い続けたため(典型は関村直人氏)、原発業界に買収された御用学者ばかりという印象があります。その中で、児玉先生にはびっくり。脱原発で有名になった京大の小出裕章先生以上に、怒り狂っています。今回の事故による放射線障害がいかに深刻で、なにもしない政府が、いかに犯罪的か。東大の原子力関係の教授の中に、こんなに学問的良心と誠実さを持つ人がいるのか、と驚きました。
証言の中には、かなり専門用語が出てくるので、よくわからない個所はたくさんあります。しかし、全体として聞いて行くと、どれほどすさまじい事態が起きているか、容易に想像がつきます。先生が主に調査や除染作業をしている、原発に近い南相馬市の恐るべき実態については、とくに聞いて下さい。この瞬間も、福島の子供はどんどん前がん状態になっている。それについて、現地の親までが、ほとんど事実を知らない・・・。
また、児玉先生は徹底除染を求めていますが、有名な公害病「イタイイタイ病」の後始末で、有害物質カドミウムに汚染された土地の除染にすでに、「8000億円」かかっている。福島原発による汚染の除去には、その1000倍かかる。いったい、東電と政府は何をしてしまったのか。1000倍となると、800兆円です。日本の国家予算80兆円の10年分を全部、除染に使わないといけない。
しかし、そんなことより、将来がんになることがほとんど確実になっている福島の子供たちの人生はどうなるのか。わずかな慰めは、東大の教授にも、電力会社に買収されず、戦っている人がいると知ったことです。ともかく、見て下さい。
7/27 衆議院 厚生労働委員会
児玉龍彦さん(東京大学先端科学技術研究センター教授
東京大学アイソトープ総合センター長)の
「放射線の健康への影響」参考人説明。
http://www.youtube.com/watch?v=O9sTLQSZfwo
デフォルト危機に国民の怒り高まる Newslog USA
8月2日の期限が迫る米債務上限引き上げ問題で2党間の交渉は難航、デフォルト(債務不履行)回避が実現できるのかどうか危なくなってきた。妥協を許さずデフォルトにもっていき、オバマ再選を阻もうと公然と話す共和党支持者もいる一方、一般市民は連邦議会議員の事務所前で集会を開き回避を訴えている。ネット上では「F*** YOU WASHINGTON」というツイートが広がるなど、ワシントンの成り行きを見守る市民の間で怒り・焦燥感が高まっている。
民主・共和両党の争いに慣れている米市民も、今回の財政危機は他人事ではすまされない。特に25日の演説の中で、オバマ大統領の「もし交渉決裂でデフォルトに陥れば、政府はすべての支払いをする十分な金がなくなる。その支払いの中には毎月の社会保障給付金、退役軍人給付金、何千もの企業との契約も含まれる」という言葉は、社会保障にたよる高齢者の危機感を増幅させた。
障害者を含めた社会保障受給者数は、政府データによると、2010年末で5400万人をこえる。その内高齢者は約4400万人。4分の3の受給者がこの社会保障のみにたよって生活している。平均受給額は月に約1000ドル。もし給付が止まれば、預金のない多くはたちまち生活に困る。
同演説の中で、オバマ大統領はデフォルト回避に向けて「地元の連邦議会議員に働きかけよう」と呼びかけた。それに答えるように、26日リベラル系団体ムーブ・オンが呼びかけ、全米800以上の共和党議員の事務所前で集会が開かれた。また、連邦議会の交換台は解決を求める市民からの電話でパンク状態となった。
一方、ニューヨーク在住のブロッガーのジェフ・ジャービスさんはツイーターで「F***you Washington(米政府のろくでなし)」とツイートした。「我々の国で、我々の経済で、我々の金だ。ふざけんのもい加減にしろ」「ツイッターで合唱しよう。くそったれ、米政府」。
ツイッターでは、いわゆる「Fワード」と呼ばれる4文字はふさわしくないとされている。しかし、ジャービスさんはあえてこの「Fワード」を使いリツイートするように呼びかけた。短時間で、ジャービスさんのメッセージはツイッターで飛び交い、7万以上のツイートに「F*** YOU WASHINGTON」の文句が入れられたという。
最近のピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、全体として68%の国民が2党が妥協しデフォルト回避を望んでいるという。しかし共和党内では妥協を望むのは53%。その内、草の根運動「ティーパーティー(茶会)」派は42%、共和党他派の66%と大きな隔たりがある。
この調査結果が示すように、一部保守派は妥協は許さない、デフォルトもかまわないと考えているようである。それどころか、オバマ氏を引きずり出すいい機会と考えているようだ。それを示唆したのは実業家で「不動産王」と呼ばれるドナルド・トランプ氏。オバマ大統領の出生証明書偽物説を出し、オバマ氏を激しく批判、茶会運動から支持を集めてきた。2012年の大統領選出馬をほのめかしていたが、5月に不出馬を表明したいきさつがある。
25日、トランプ氏はフォックス・ニュースのインタビューで、「共和党は妥協に応じないで、デフォルトになるようにすればいい。そうすれば、共和党は欲しかったものが手に入る。オバマは再選されないし、オバマの医療保険制度もなくなる」と語った。「国民は、今回の責任はより共和党にあると思っているようだ」というニュースキャスターの指摘に、次のように話している。「最初にデフォルトを出した大統領として、歴史に残るのはオバマだ。共和党の議員の名前など誰も覚えていないだろう」。
トランプ氏は「デフォルトに陥ることで、米国の格付けがトリプルAから下がろうが、社会保障費で暮らしている高齢者の生活を脅かそうが、貧しい者が医療を受けられなくてもかまわない、そんなこと自分の知ったことか」と言っている風に聞こえる。オバマ再選を阻むためには、国民の生活を脅かすことなど何でもないと思っているようだ。
妥協を許さない態度には、よく「my way or the highway」という表現が使われる。「自分はいつも正しい。同意しない者は去るべき」という態度だ。25日ウイリアム・デーリー大統領首席補佐官はこの表現をもじり、共和党員は債務上限での交渉に至って「their way or the highway」の態度のようだと指摘している。これはベイナー下院議長が2度も削減交渉の席を立ったことも含んでいる。
しかし市民の側からすれば、財政危機に関してはこの「my way or the highway」の態度は、2党双方に言えそうである。25日のオバマ大統領・ベイナー下院議長の演説では、相手に責任を押し付けているように感じられた。双方とも、相手が歩み寄ろうとしないのが問題と主張している。
米メデイアは、ホワイトハウスは最悪のシナリオを想定して、デフォルトに陥った場合、今プールされている資金から何を優先的に支払うのかを考慮しているという。社会保障費、高齢者対象の医療保険、公務員の給料、軍人の給料、FBIなどなど。
もしデフォルトになれば、国民がそのつけを払うのか。わずかな年金だけで暮らしている高齢者、身体障害者、退役軍人が払うのか。
大統領は25日の演説で「我々は、国民をワシントンでの政治戦の巻き添え被害者にさせることはできない」と話した。大統領の言葉を受ければ、もし失敗すれば、政治ショーでの無能な立て役者たちにつけは行くべきだろう。事態回避に失敗した大統領、ベイナー下院議長、すべての与野党議員たちに。
オバマ大統領が「大統領の給料返上。すべての連邦・州議員も後にならってほしい」と言わなければ国民は納得しないだろう。(ブログ「Newslog USA」)
マードックの本を書いた作家、「経営陣全員が盗聴の事実を知っていたと思う」と語る
28日、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)で開かれたイベントで、ルパート・マードックの伝記本『ニュースを所有する男:ルパート・マードックの秘密の世界の中』(2008年初版発行)を書いた作家マイケル・ウルフは、マードック傘下の日曜紙での電話盗聴行為を「経営陣は全員知っていたと思う」と述べた。マードック自身や家族、経営陣などに取材し、いわば「マードック一家の一員」となりながら本を書いたウルフ。その発言の数々は、ここ数週間、大きなニュースになっている電話盗聴事件やマードックのビジネスのやり方の核心に迫るものだった。その内容の一部を紹介する。
イベントはLSEに本拠地を置く、メディアのシンクタンク「ポリス」の代表チャールズ・ベケットが、米国からやってきたウルフに盗聴事件の感想やマードックはいま何を考えているかなどを聞く形を取った。
―本を書くために、9ヶ月にわたってマードックにインタビューしたそうだが、マードックはウルフの本をどのように受け止めたか?
マイケル・ウルフ:出版される前に本を読んでもらったところ、電話があった。マードックは非常に怒っていた。マードックがCEOとなっているニューズ・コーポレーション(ニューズ社)かマードックを誉めるような本になると思っていたらしい。同時期に、投資家ウオーレン・バフェットの本が出ていて、これはPR的な内容だったので、同様のものを期待していたようだ。マードックは激怒しており、脅されもした。(本の中では、マードックはウルフに対し、「話が個人的すぎる」と怒ったそうである。)
マードックの生涯は、非常に驚くべき物語だ。自分だけの力で、自分がやりたいことをやってきた男の人生だ。自分の本能を信じて、ここまでやってきた。すばらしいビジネスを築き上げた。これほど、長い間ビジネスを続けている人もめずらしいのではないか。
―オーストラリアで生まれたマードックの父も新聞経営者だったが。
ウルフ:そうだ。マードック家というのは、オーストラリアでは本当に有名な一家で、米国で言えばケネディ家に相当するかもしれない。マードックの母エリザベスは102歳だが、いまだ健在だ。エリザベスは息子のルパートは一冊も本を読んだことがないと言っていた。
―7月19日、ルパートと息子のジャームズが英下院委員会に呼ばれ、盗聴問題に関して質疑を受けた。3時間を越える質疑応答で、父ルパートは80歳という年齢のせいもあってか、質問を何度も聞き返し、記憶も弱い感じがした。よぼよぼのようにも見えたけれど、あれが普通のマードックなのだろうか。インタビューのときは、どうだったのだろう?
ウルフ:一種の自閉症のような感じだ。自分の周りで何が起きているか分からないことがあるし、周囲とのコミュニケーションがよくない。聞き取り能力も高くない。また、会話の途中で言葉を失うこともある。長い間、沈黙となったりする。周囲の人たちは、「答えをじっくり考えているんだよ」と私に言ったけれども。まあ、年をとっていることはとっているよね。高齢でも若々しい人はいるものだが、マードックはそうではない。
だから、インタビューは苦労した。どうやって焦点をあわせて、質問に答えてもらえるか。ビジネス上の決断をどうやって行ったのか、何故その手を打ったのかなど、自分のことを話すのは得意ではないようだ。しかし、他人に関しての評価を聞くと、はっきりと的確に答える。相手の弱点をはっきりと言える。
例えば、盗聴事件がらみで廃刊となった日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの昔の編集長で、次には発行元ニューズ・インターナショナル社のCEOになった女性で、レベッカ・ブルックスがいるね。自分の娘のようにマードックは可愛がっているのだが、ブルックスのことを、外から来て「マードック家の中に入り込んでいる」と言っていた。
―マードックは盗聴事件に関して、どこまで知っていたのだろう。下院委員会では、最近まで知らなかったとしているが。
ウルフ:新聞に関わることなら、マードックは全部知っているよ。
―マードックは新聞の編集に干渉しないと委員会では述べていた。
ウルフ:いや、細かいところまでうるさく言うのだと思う。ただ、傘下の新聞がマードック色になるのは、細かい指示を出すというよりも、働いている人みんなが「マードックがこうしてほしいと思うだろうな」という線を達成しようとするからだ。マードックを喜ばせようとする、と。
―今回の危機を、マードックは乗り越えられるだろうか。これまで、何度もビジネス上の危機を乗り越えてきたわけだから、乗り越えられるとは思うが。
ウルフ:マードックは確かに危機に対処することに慣れている。しかし、信頼感とか、透明性とかに関わる問題に対処することには慣れていない。自分のビジネスのやり方を、一般大衆に説明することには慣れていない。ニューズ社は、非常に古いタイプの会社なのだと思う。市場を独占して、ライバル社を倒して、どんどん大きくなってきたが、現在は状況が変わった。ビジネス活動を説明したり、透明性を維持しないと受け入れてもらえなくなった。
―電話盗聴事件についてはどういう感想を持っているか。
ウルフ:マードックはメディア帝国を大衆紙販売で作り上げてきた人物だ。大衆紙のビジネスとは何か?傷つきやすい状態にある人を捕まえて、記事を作って、これを売るーこれが大衆紙の存在意義だ。
マードックにも愛する家族があるが、こういう大衆紙のビジネスは、家族に対する愛情とは別のコンパートメントに置いている。したがって、ニューズ・オブ・ザ・ワールドの読者260万人に対して、欺瞞を販売できた。
―マードックの現在の妻、ウェンディはどんな人か?中国系米国人で、マードックより40歳近く年下だ。
ウルフ:非常に面白い人物だ。マードックを囲む人々も(先妻2人の)子どもたちも、ウェンディのことを嫌っている。しかし、ウェンディは強い位置にいる。考えてみると、マードックはいつも、妻の尻に敷かれている。妻の言うことだったらよく聞くのだ。
マードックは、ニューズ・オブ・ザ・ワールドの発行元となるニューズ・インターナショナル社のCEOレベッカ・ブルックスを、なかなか、辞任させようとしなかった(7月15日、辞任)。
その理由(の1つ)は、ウェンディがブルックスを嫌っており、もしブルックスをすぐに辞めさせたら、ウェンディの望みをかなえたことになるので、先妻の子どもたちが反発すると思ったから。非常に複雑な要因がからみあっている。
―マードックは、盗聴事件をどう思っているのだろう?
ウルフ:おそらく、何をどこで間違ったのか、分からないでいるのだろうと思う。というのは、マードックの大衆紙はいつもこんな(盗聴行為や違法行為)手段を使ってきたし、2002年や2005年に発覚したときにも、それほど悪い行為だとは解釈されていなかったと思う。「こんなものさ」と。「一部の悪い記者がやっていただけなんだ」と説明して。
マードックや大衆紙のやり方は昔からずっとそうだったとしても、周囲が変わってしまった。5月、IMFのトップ(当時)、ドミニク・ストラスカーンが性犯罪容疑で逮捕された事件があった。それまでは何年もなんともなくても、あっという間に事件となる。物事の認識が変わったからだ。
―盗聴事件を通じて、英国の政治家がマードックに距離を置くようになったが。
ウルフ:政治家はマードックを「有毒」と見なすようになったのだと思う。
―マードックは、下院委員会で、長年にわたり、首相官邸を何度も訪れたことに触れ、「後ろのドアから入った」、「首相たちがほうっておいてくれないので」などと言っていた。マードックは、政治の中枢とこのように親しくすることを好まないのだろうか?本音だったのだろうか?
ウルフ:官邸に行って首相に会うということを、楽しんではいなかったと思う。マードックは、自分がすごいということを他人に評価してもらう必要を感じない人間だから。
―今後、ニューズ社はどうなるか?
ウルフ:ニューズ社とマードックの関係は変わると思う。息子で同社の経営陣ジェームズに対する信頼も落ちたと思う。マードックがいつまでも生き続けると思った人は多いかもしれないが、寿命は必ずある。英米でニューズ社のビジネスに関わる調査が行われるだろうし、そうすると、同社の「犯罪行為」が明るみに出る。
―マードックは本当に新聞の編集長によく電話するようだが。
ウルフ:そうだ。うるさいほどだという。どの見出しにするのか、ニュースは何か、と。ブルックスが言うには、マードックを黙らせるには、ゴシップ記事を出すのが一番だと。まさか、とっておきのゴシップ記事を出そうと盗聴行為をしたのが、マードックのためだったということはないだろうが。
ブルックスは、ニューズ・オブ・ザ・ワールドの編集長時代、すべてのことに深く関与していた。盗聴行為が日常的に行われていたことを知らないはずはない。ジェームズも同じだ。編集幹部、経営陣全員が知っていたはずだ。
―何度もマードックを取材して、最終的にどのような人物として評価をするか。人間として、好きになれるか?
ウルフ:僕はマードックが好きだ。非常に人間らしい。気取ったところがない。温かみもある。やりたいことやって、何かを成し遂げた人物だ。ただ、ちょっと後ろを向いた隙に、斬られるかもしれないけれど。
―あなたが下院委員会にもし出席できるとしたら、何を聞くか。
ウルフ:自分だったら、マードックの片腕で、ついこの間まで米ダウジョーンズ社CEOだったレス・ヒルトンを召喚する。ヒルトンは、もともとの盗聴事件発覚時に、ニューズ・インターナショナル社の会長だった。一体どのようにして仕事を引き継いだのか、深く問い詰めるだろう。
―ニューズ社はこれからどうするべきか。自分だったらどうするか?
ウルフ:自分が経営者だったら、傘下にある大衆紙サンを売却する。そして、売却益を使って、非営利の信託(トラスト)組織を作る。例えば、ガーディアン紙のスコット・トラストのような。そして、調査報道とか、高質のジャーナリズムをこのトラスト組織を通じて、支援する。
そこまでやったら、今まで盗聴とか悪いことをしてきたことのつぐないとして、認めてもらえるのではないかー。ただし、私がこれをマードックに進言しても、聞いてくれないと思う。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より)
マードックが完全子会社化を狙ったBスカイBとはどんな会社?
英国の老舗日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドは、盗聴疑惑が深刻化して廃刊となった。このとき、廃刊のもう一つの理由として、発行元の親会社ニューズ社による英衛星放送BスカイBの全株取得計画があったといわれる。その後、盗聴行為をするような会社がBスカイBを完全子会社化するのはいかがなものかと政界の批判が大きくなり、ニューズ社はこの計画を断念せざるを得なくなった。果たして、BスカイBとはどんな会社で、何故ニューズ社のトップ、ルパート・マードックはこの会社を欲しがったのだろう?
「英国ニュースダイジェスト」の28日発売号に書いたニュース解説の記事に補足したものを以下に転載します。
―BスカイBの主要株主とは
株主 所持比率(%)
ニューズ・コーポレーション 39.14
ブラックロック・インク 4.63
キャピタル・グループ 4.27
フランクリン・リソーシズ 3.19
フランクリン・リソーシズ(別部門) 3.06
リーガル&ゼネラル 3.06
(資料:テレグラフ紙、他)
「メディア王」ルパート・マードックが最高経営責任者(CEO)となる、米国の複合メディア企業ニューズ・コーポレーション(ニューズ社)は、1年ほど前から、英国の衛星放送BスカイBの完全子会社化(現在は39%の株を所有)を計画していた。
ニューズ社は英国の現地法人であるニューズ・インターナショナル社を通して、日刊大衆紙サン、日曜大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド、高級紙タイムズとサンデー・タイムズを発行してきた。延べの発行部数は800万部にのぼり、この「マードック・プレス」は英国の新聞市場で大きな位置を占めてきた。
BスカイBの完全子会社化に際し、これを了承する政府側から「メディアの多様性を阻害する」と言われないよう、BスカイBのニュース部門を別会社とする案を出し、着々と完全買収への歩を進めていた。
6月末頃まで、子会社化の実現はほぼ確実視されていたが、事態が急変したのは7月上旬。2005年から発覚したニューズ・オブ・ザ・ワールドでの電話盗聴疑惑が、当初の推測よりも広範囲で、しかも政治家や有名人ばかりか、誘拐・殺害された少女の携帯電話にも及んでいることが分かり、国民の大きな怒りの矛先がマードック・プレスに注がれた。
BスカイBの完全子会社化を承認する一歩手前だった政府側も態度を変化せざるを得なくなった。13日には下院で、ニューズ社によるBスカイBの完全買収を断念させることを促す議論が行われる予定となった。議論開始の前に、ニューズ社は「現状の環境では、買収計画の実現は困難になった」と発表した。
―BスカイBの設立とマードック
現在、約1000万人のサービス加入者を誇るBスカイBは、英国最大の衛星放送局だ。その発足は1990年だが、誕生にはマードックが絡んでいる。1978年、ロンドン近辺の平日の放送権を持っていたテームズ・テレビの元職員ブライアン・ヘインズが、欧州全域向けに放送する衛星テレビ「SATV」の放送を始めた。英国内での放送免許を持っていなかったので、海賊放送であった。
しかし、1980年代に入り、ヘインズは資金難に窮し、株の80%をマードックのニューズ・インターナショナル社にほんの1ポンドで売却した。マードックは、買収後、名称をスカイテレビに変更した。
1980年代後半、放送業界の監督機関が「英国衛星放送」(ブリティッシュ・サテライト・ブロードキャスティング、BSB)に英国内に向けた衛星放送の免許を与えたが、技術上の問題の解決に時間がかかり、放送はなかなか開始できないでいた。
1989年、マードックが、それまで欧州向けの放送だったスカイを、今度は英国向けの放送局に変更。一方のBSBが放送を開始したのは、1990年4月。BSBとスカイは競争状態となったが、両者も初期投資の巨大さに青息吐息の経営状態となった。同年11月、両社の合併により、BスカイBが成立した。
ニューズ社によるBスカイBの買収案が断念されたことで、買収を見込んでいた投資家たちが2億ポンド(約25億円)相当の損をしたと伝えられている(テレグラフ、7月14日付)。ニューズ社の副執行最高経営責任者で、父ルパートの次男となるジェームズ・マードックの責任問題も浮上している。
確実視されていた利益を手にできなかった機関投資家や、株主からの訴訟が起きる可能性もあると言われているが、完全子会社への買収提案は、今後も「ほとぼりが醒めたら」再開する、という見方が強い。今後の動きに注目だ。
―関連キーワード
News Corporation:米国の複合メディア大手企業。オーストラリア生まれの実業家ルパート・マードックが主要株主で、会長兼最高経営責任者。英国の新聞タイムズ、米ニューヨーク・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルを含む新聞業、映画会社20世紀フォックス、米テレビのFOXテレビジョンなど、複数のメディア媒体を傘下におさめる。オーストラリアのアデレードで1979年に設立。2004年、米デラウェア州で再設立し、本拠地を米ニューヨークに移動。英国の現地法人がニューズ・インターナショナル。(ブログ「英国メディア・ウオッシ」より)
「水産特区」反対の動きが広がる 「漁業権と浜の集落は一体」
村井宮城県知事が提唱し、首相の私的諮問機関である東日本大震災復興構想会議が提言で明記、国の政策に盛り込まれることになった「水産特区」に対し、批判が高まっている。
漁業協同組合の全国組織である全国漁業協同組合連合会(全漁連)は今月6日「水産特区反対の」の緊急集会を開き、水産得反対を決議した。集会には全国の漁業者ら約230人のほか、自民党の石破政調会長、共産党の志位委員長ら野党幹部も出席、反対に同調するあいさつを行っている。民主党からは農林水産部門会議の佐々木隆博座長も出席したが、「皆さんの思いを政権幹部に伝える」と述べるにとどめたと、新聞報道は伝えている。
宮城でも県漁連はもちろん反対だが、民間団体も動き出している。7月3日、石巻市の石巻専修大学でみやぎの漁業の未来を考える県民のつどい「『水産特区・漁業権をめぐる問題』でのシンポジウム」が開かれ、「水産特区を撤回させよう」というアピールを出した。主催は東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターで、学者、弁護士、消費者、それに漁業関係者ら400人が参加した。
シンポでは法律家の立場からセンター世話人の庄司捷彦弁護士が「漁協の意志、意向を無視した特区の提案に漁業者の怒りが強まっている。課題山積の中、水産県宮城を多面的に考え、水産復興の道筋を探りたい」と述べた。
元山形大教授の綱島不二雄さんが、村井嘉浩知事の特区構想について問題提起し「民間企業への漁業権の開放、漁港の集約というが、民間企業が入らないと、水産復興が動かないというのはおかしい。小さい浜で漁が再開できる仕組みを早急につくるべきだ」と指摘、「漁村は家族が役割分担して成り立っている。漁村が崩壊し、漁業権が消滅する。海は国民のもの。漁民が生き生きと働くことで浜は守られる。漁業権を守ることの大切さを確認してほしい」と強調した。
基調報告した県漁協の木村稔経営委員会会長は、「一部漁業者の同意があるからといって、漁場の調整・管理を企業に委ねた場合、漁場の一元管理は崩れ、安定した生産の維持は難しい。企業は魚価の低落で採算に合わないと撤退する。復興は企業のためではない。50年続いた漁業の復興策として、漁協が漁場の一元管理をし、流通、加工業者、漁業者が連携する枠組みをつくる必要がある。何とか特区を阻止したい」と力説。
水産加工業、消費者などの代表4人も、それぞれの立場で特区をめぐる問題で意見を述べた。
地域でも反対の動きだ出ている。その一つ、津波で壊滅的打撃を受けた女川町では、5月中下旬に復興をめぐる公聴会を開催している。漁港の集約化を提示する町長に対し、ほとんどの地域で、「漁港はこれまでの形で復興し、集落を再建したい。集落と漁業権は一体のものであり、それを企業に開放することは、地域に暮らし、働く住民の生存権を否定することになる」、という意見が出された。(日刊ベリタより)
盗聴事件で英紙NOW廃刊 「メディア王」に強い批判 -政界、警察との癒着あらわに
「新聞協会報」(26日付)に、マードックとニューズ・オブ・ザ・ワールド紙を巡る事件のこれまでの概要を書いた。以下はそれに若干付け足したものである。いままでこの事件を追ってきた方には繰り返しがあって恐縮だが、最後の部分が若干の参考になればと思う。
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英日曜紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」(NOW)が10日、168年の歴史を閉じた。数年前に発生した電話盗聴事件が深刻化したことがきっかけだ。盗聴事件の「犠牲者」は老舗新聞だけに限らず、発行元ニューズ・インターナショナル(NI)社幹部、ロンドン警視庁幹部らが相次いで辞任した。事件はまた、マードック・メディアと政界、ロンドン警視庁との「親しすぎる関係」をあらわにした。盗聴事件の経緯とその意味に注目した。
―発端は王室関連記事
盗聴事件の発端は、2005年秋、NOW紙に掲載された、ウィリアム王子のひざの怪我に関する記事であった。王室関係者は携帯電話が盗聴された疑いを持ち、ロンドン警視庁に調査を依頼した。2007年1月、同紙の王室報道担当記者と私立探偵は携帯電話への不正アクセス(=携帯電話の伝言メッセージを無断で聞いた)で有罪となり、実刑判決(記者は4ヶ月、探偵は6ヶ月)が下った。アンディー・クールソン編集長は盗聴行為は「まったく知らなかった」が、引責辞任した。
同年3月、発行元のNI社の役員は盗聴行為に関与していたのは「王室記者のみ」と説明した。
しかし、その後の数年の間に、複数の盗聴犠牲者らがNOW紙に対する盗聴被害の賠償を求めて提訴し、「ひとりの記者の行動」とする説明は現実味を失っていった。
09年夏、高級紙ガーディアンがNOW紙が「3000人近くの著名人の電話を組織的に盗聴していた」とする一連の記事を掲載。警視庁に対し、再捜査を求める声が高まったが、これを警視庁ジョン・イエーツ警視監は「新たな証拠がない」として却下した。
盗聴事件が国民的な事件として大きな注目を集めだしたのは、今年7月4日だ。ガーディアンが、2002年に誘拐・殺害された13歳の少女ミリー・ダウラーちゃん(今年6月、男性が殺人罪で有罪判決)の携帯電話の伝言メッセージをNOW紙記者や同紙に雇われた私立探偵が聞いていた、と報道した。記者らは、新しいメッセージが入らなくなること防ぐため、適宜伝言を消した。ミリーちゃんの両親や警察は伝言が消されていたので、ミリーちゃんがまだ生きていると信じて望みをかけた。殺害された少女の電話にまで違法行為を働くNOW紙の手法が、国民の大きな怒りを買った。
広告主がNOW紙への出稿を次々と取りやめ、親会社ニューズ・コーポレーション(ニューズ社)の株価も連続して下落。経営陣は7日、日曜紙市場ではダントツでトップの発行部数(6月で約260万部)を持つ同紙を、10日付で廃刊すると発表した。
―元官邸報道局長を逮捕
NOW紙の盗聴事件は、引責辞任したクールソン元編集長を、野党(当時)保守党が辞任からまもなく広報責任者として雇用したことで政治色を帯びた。10年5月、保守党と自由民主党による連立政権が発足すると、キャメロン首相はクールソンを官邸の報道局長にした。クールソンはNI社の大衆紙サン、NOWで経験を積んだジャーナリストであった。NI社は「メディア王」ルパート・マードックが最高経営責任者(CEO)となるニューズ社の傘下にある。クールソンを報道局長に起用することで、キャメロンはマードックを政界の中枢に招きいれたともいえる。
1979年発足のサッチャー政権以降、どの英国の政権も、マードックと良好な関係を持つことに心を砕いてきた。「マードック・プレス」(サン、NOW,高級紙タイムズとサンデー・タイムズ)の総発行部数は、英国の新聞市場の40%を超える。英国の最大の有料テレビ局BスカイBの株もニューズ社が39%保有しており、英国メディア市場でマードックの影響力は圧倒的だ。
しかし、昨年末にかけて盗聴疑惑報道が過熱化する中、クールソン起用はキャメロンにとって負の要素となった。今年1月、クールソンは官邸職を辞職した。今月8日、クールソンは先に有罪・実刑判決を受けた元王室報道記者とともに、警察への賄賂授与疑惑と電話盗聴疑惑で逮捕されている。
ミリーちゃん事件発生時にNOW紙の編集長だったレベッカ・ブルックスはキャメロンの個人的な友人の一人だ。NI社のCEOに就任していたブルックスは15日、辞任。17日、クールソンらと同様の容疑で逮捕された(3人は、保釈中の身)。これで盗聴事件による逮捕者は10人目である。
一方、ロンドン警視庁も「癒着」疑惑の対象となった。警視庁は今年1月からようやく再捜査を開始したが、新たにNI社が出した資料によって、NOW紙が警察に賄賂を払って著名人の個人情報などを高額で買っていた疑いが出てきた。
また、2006年、私立探偵宅から没収した約1万点の書類の中に、約4000人に上る盗聴された可能性のある人物がいることが、6月末、判明した。2009年からの再捜査を求めるガーディアンなどの要求を、警視庁は却下してきたが、その理由はNI社から捜査をしないようにという圧力があったためではないだろうか?
この疑惑を裏付ける動きがあったのは今月14日だ。元NOW紙の副編集長だったニック・ウォリスが盗聴疑惑がらみで同日、逮捕(後、保釈)されたが、ウォリスは警視庁のコンサルタントとして高額で雇用されていたことが分かった。さらに、この元NOW紙副編集長が関与する保養スパに、警視総監が無料で数週間静養していたことが報道(サンデー・タイムズ紙、10日付)された。警視庁がマードック・プレスと不適切に親しい関係を保っているという批判の声が高まり、17日、ポール・スティーブンソン警視総監が辞任。翌日にはイェーツ警視監も後を追った。
―親密政治家らが反旗
違法行為もいとわないマードック・プレスの取材手法がミリーちゃん事件をきっかけに暴露されると、これまで親しい関係を維持してきた政治家たちが反旗を翻しだした。ニューズ社はBスカイBを完全子会社化する計画を進めており、6月末までこの計画の実現は確実視されていた。しかし、膨れ上がるニューズ社への批判が、与野党の政治家たちを結束させ、13日にはニューズ社に対し、完全子会社化計画をあきらめるよう促す動議を提出するところまで進んだ。計画実現が困難になったと見たニューズ社は、動議が議会で議論される直前に、計画の断念を発表した。
ガーディアンのコラムニスト、ジョナサン・フリードランドは、今回の事件は「革命だった」とさえ述べる(15日付)。大衆紙を使って私生活を暴く「マードック・メディアの力を恐れて、マードックを表立って批判してこなかった政治家が、堂々とメディアの集中化の弊害を語るようになった」からだ。今回の事件をきっかけに、フリードランドは、英国の支配層(エスタブリッシュメント)がマードック・メディアと手を切ったと分析している。(「英国メディア・ウオッチ」より)
被災した放送人の体験を記録~放送レポート別冊「大震災・原発事故とメディア」
東日本大震災は発生から4カ月半になります。死亡が確認された方は1万5616人、行方不明の方は4949人(7月23日現在、警察庁集計)に上り、被害の全容は今もなお確定していません。東京電力福島第一原発事故の収束は遠く、それどころか最近では原発から遠く離れた宮城県の稲わらで放射性セシウムの濃度が高まり、えさとして肉牛の体内に取り込まれるなど、予想しえなかった被害が拡大しています。わたしたちの社会は3月11日を境に、まったく違う別の世界に移ってしまったかのような観があります。
そんな中で、わたしも会員になっているメディア総合研究所が、「放送レポート」(年6回発行)の別冊として「大震災・原発事故とメディア」を発行しました。
※メディア総合研究所 http://www.mediasoken.org/
この大震災では、被災地の新聞社、放送局などのマスメディア企業も被災し、そこで働く人たちも被災者となりました。放送レポート編集委員会による本書の「序にかえて」は、本書の刊行の目的について以下のように記しています。
「放送局も、その歴史が始まって以来の大惨事に直面しました。これだけの広範囲にわたって、同時に複数の放送局が被災したのは初めてのことです。大規模停電に見舞われ、放送の継続そのものが危ぶまれる中で、各民間放送局は収入源であるCMを飛ばして、局の従業員も関連で働く人々も、不眠不休で特別番組を制作・放送し、地震・津波の被害や安否情報、ライフライン情報などを発信し続けました。そのような努力の跡を少しでも記録に残したいと考え、1972年の本誌創刊以来、初めて『別冊』を出版することを急きょ決定し、被災した各放送局の現場で働く皆さんなどに寄稿をお願いしました」。
本書では、岩手、宮城、福島各県の民放産業で働く方々を中心に、民放労連などを通じて集まった12人の放送人の被災と情報発信の体験記が収録されています。さほど大きなボリュームではありませんが、企業横断的な生の声の集録と言う点で、その価値は小さくありません。強く印象に残ったレポートを一人だけ紹介します。ミヤギテレビ労組の伊藤拓さんは「『頑張ろう!』の意味」とのタイトルで、秒単位のテレビの世界で被災者に贈るメッセージのベストのフレーズが短い「頑張ろう」であるのは間違いないとしつつ、もう十分すぎるほどに頑張り、疲れ果てている被災者に「頑張ろう!」という言葉を贈っていいものか、と自問しています。取材を重ねる中から自分なりに出した答えとして、「頑張ろう!」という言葉に具体性を持たせること、自分が被災者に接するときには「頑張ろう!」以外の表現を使うことを挙げています。
この大震災と原発事故の未曽有の惨状を前にして、広い意味でマスメディアで働く同僚の一人として、12人の方々の体験記はいずれも胸に染むものでした。わたし自身は大震災直前の3月1日付で、勤務先の人事異動に伴い東京から大阪に移り住み、3月11日以降の日々を大阪で過ごしてきました。被災地からも、政治の中心の東京からも離れた、いわば後衛に立っている一人として、3月11日以降のことをどう考えていけばいいのか、いまだにわたし自身の言葉で語ることができません。しかし、どんな分野であれ、後衛に位置する人間にはそれなりの役割があるでしょうし、できることは少なくないだろうと考えています。12人の方々の体験記も一助に、その答えを見出す試みを続けていこうと思います。
本書にはこのほか、4月30日にメディア総研が「開かれたNHKをめざす全国連絡会」と共催したシンポジウム「原発事故とメディア」(広川隆一さん講演「チェルノブイリからフクシマへ」など)や、民放労連全国ラジオ会議で開かれたパネルディスカッション「ラジオに何ができたのか」を採録。放送レポート146号から「原子力PA方策の考え方」を再録しています。
発売元は大月書店、定価1365円。
※大月書店のサイト http://www.otsukishoten.co.jp/book/b90600.html
(ブログ「ニュースワーカー2」より)
日本女子サッカーのワールドカップ(W杯)初優勝に、仏メディアの無関心は政治なのか?
先週17日付のフランスの大衆的全国紙 パリジャンは、世界女子 サッカーワールドカップ(W杯)決勝戦での日本の勝利はまったく予想外であり、世界サッカー界の驚きだ、と伝えた。ドイツ・フランクフルトで開催された決勝戦では、米国と日本とが2対2の引き分けの後、PKで日本が得点し、優勝したが、フランスのテレビは夜8時のニュースでも、試合後の深夜のニュースでもこの決勝戦については一言も触れなかった。
フランスの国営テレビでの報道が皆無に等しいのは、女性のサッカーなので興味がないのか、夏のバカンスで記者がいなかったのかはわからない。おそらくは一番の理由というのは、フランスのスポーツ界が南アフリカのサッカーW杯以来、人種別選手選定などの不手際があって、その後遺症が今も続いていているからなのだろう。しかし、政治的に利用価値がなく報道することがかえってフランス政治の災禍を匂わせることだという理由から報道しないなら、こスポーツに対する大きな認識の誤りではないだろうか。
女子W杯ではフランスは4位で振るわなかったせいなのだろうか。その一方で、ツール・ド・フランスを他にこれしかニュースがないかのように大きく取り上げている。
フランスは冬季オリンピックの開催地候補選で、韓国と争って負けた。韓国までフィヨン首相やシャンタル・ジョアノ・スポーツ大臣が出かけていって応援した。現地でフィヨン首相は記者会見し、がっかりした様子もみせずに、次の成功の教訓を引き出したいと抱負を語った。これに対し、スポーツ専門の新聞エキップの記者は、フランスがこれまで候補地獲得を逃してきたのは初めてではなく、教訓を生かす機会は前にもあったはずだと述べた。
国営放送フランスA2の司会者は、これ以上スポーツ記者に何を話されるのかわからないと心配している様子であった。スポーツ記者が政治家に対し本当のことをいうのは見るのはやはり気持ちがいいものである。政治がスポーツを利用する風潮はすでに歴史的に古代からあるが、逆にこれを切り返してゆく風潮が見えたのが印象的であった。(ブログ「フラネット(パリ通信)」から)
津波と原発の被災地の村と浜から(中)≪原発と農民≫それでも種をまく
放射能は農民のこころを引き裂いた。この春、福島の農民は悩みながら種をまいた。大なり小なり土が汚染されていることは間違いない。そこに種をまき、田植えをして果たして大丈夫なのあろうか。収穫をしたものを食べてくれる人がいるのか、そんな土地に作物をつくっていいのだろうか。それでもみんな種をまき、苗を植え、田植えをした。なぜと問われたら、「百姓だから」というほかはない。
ーそれでも種をまくー郡山の中村さん夫妻―
いつもは明るく、よく話す中村喜代さんだが、その日は寂しげで、不安そうにみえた。東日本大震災の日からほぼ3週間が経った4月初め、福島第一原発の暴走はその行き先も定かではないことが次第にはっきりしてきていた。ふいに喜代さんがまるで歌うようにいった。
「百姓は種まいて百姓、つくって百姓」
そして、さあと掛け声をかけて台所に立って行った。瞼が光っているように見えた。連れ合いの和夫さんはそれを受け、「補償とか、そんなことではなく時期が来れば田んぼを起こして、水を入れ、田植する、それを続けないと百姓としてやっていけなくなる。そんなものです」と自分に言い聞かせるようにゆっくりと話した。
郡山市逢瀬地区で代々の百姓を継ぎ、もう四〇年を超える。有機農業に転換してかなりになる。何年も冬水田んぼもやってきた。その田んぼには時期になると白鳥が百羽以上やってくる。喜代さんは地域の一角に仲間の女たちとビニールハウスで野菜の直売所を作り、生産と販売・加工を手がける事業を続けている。
長年積みあげてきたそうした試みが原発で一瞬にして吹き飛んだ。野菜は放射線が検出されたということで出荷停止や自粛になり、直売所は閉鎖したまま、いつ再開できるかのめどもなかった。
そんな話をお二人から聞きながら、「今年の作く付けは」と質問したときのお二人の応えである。「それでも種をまく」、そんな言葉が頭をよぎった。百姓だから出てきた言葉なのだと思った。
ー「休むと百姓でなくなる」-三穂田の高田善一さんー
同じく郡山市の三穂田地区で集落仲間と稲作生産組合をつくり、六〇ヘクタールを経営する高田善一さんは五月、例年だと否応なく張り切る時期なのに、今年は何とも気合が入らない、と悩みながらトラクターに乗っていた。秋、本当に食べられるものができるのか、なにより放射能が降り積もった土地に作物を植えていいのだろうか、それを考えると、好きな酒も飲めない、仕事の後一杯やるのが仲間の楽しみだったが、あの三月一一日以来、誰も飲もうといわなくなった、と語る。
高田さんは稲作のほか乳牛を八頭飼っている。乳を搾るだけでなく、田んぼに入れる堆肥を手に入れるためにも牛は欠かせない。その牧草からもセシウムが出た。五月半ば、ふらっと訪ね、作業場で待っているとトラクターで帰ってきた。牧草をすき込んできたのだという。「切ないですね」というと、「切ないね」といった。
それでもみんな耕し、種をまき、田植えをした。なぜと高田さんに問うた。中村さんと同じ答えが返ってきた。「百姓だからね、休むと百姓でなくなる」。
種を購入し、肥料をまき、燃料代を消費して機械を動かし、自分の労力は計算に入れなくても結構お金をつぎ込んでいる。そうして作った作物が食べられるものになるのかどうか、誰にもわからない。それでもみんな種をまいた。(日刊ベリタより)
波津先生のお勧め「脱原発を掲げる唯一の金融機関、城南信用金庫」
以前も時々紹介した、ネット動画サイト「マル激トーク・オン・ディマンド」に、金融界で唯一、脱原発を主張する東京の城南信用金庫の吉原理事長が登場しました。会費を払っていない人は、冒頭しか見られませんが、動画は見なくとも、このサイトの以下の説明を読むだけで、だいたいわかると思います。僕も、城南に預金を一部移そうと思いつつ、なかなかその時間がありません。皆さんも、一度、検討してみてはいかがですか。
■マル激トーク・オン・ディマンド第536回(2011年07月23日)
信用金庫が脱原発宣言をすることの意味
ゲスト:吉原毅氏(城南信用金庫理事長)
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_536_pre.asx
菅直人首相は震災発生から「脱原発宣言」までに4ヶ月あまりを要したが、震災の衝撃も覚めやらない4月1日に、堂々と脱原発宣言をやってのけた金融機関がある。日本初の脱原発金融機関として今や全国的に有名になった東京の城南信用金庫だ。同庫のホームページに掲載された宣言「原発に頼らない安心できる社会へ」は瞬く間にツイッターなどで広がり、同時期にウェブサイトに公開された吉原毅理事長のインタビューは8万回以上も再生された。
経済界では異例の脱原発宣言はなぜ行われたのだろうか。また、脱原発で城南信用金庫に続く金融機関はなぜ現れないのだろうか。
城南信用金庫は世田谷区や品川区など東京の城南地区を中心に地域金融を展開する信用金庫で、都内に50店舗、神奈川県に35店舗を持ち、店舗数、預貯金額ともに信金としては日本でトップクラスの規模を誇る。数々のユニークな取組みで金融界の異端児と評されることが多いが、3代目理事長の故・小原鐡五郎氏の教えである「裾野金融」「貸すも親切、貸さぬも親切」「カードは麻薬」など「小原鐡学」を社是に、目先の利益を追求せず、人と人とのつながりや地域貢献に主眼を置く、地道な経営でも知られる地域密着型の信用金庫だ。
なぜそのような地域の金融機関が、脱原発宣言などを行ったのかについて、吉原氏は原発事故の発生以後、誰も責任を取とろうとしない政府や企業の姿勢に強い違和感を持ったことをあげる。どんな企業でも事故が発生したら、謝り、責任をとるはずだが、原発については誰も責任をとらない。政府もマスコミの報道にも違和感を覚え、誰かが発言しなければならないと考えた結果が、この宣言だったという。しかし、脱原発を宣言した以上、自らもそれを行動で表さなければなければならない。自分たちに何ができるかを考えた結果、原子力の占める発電量が3割なので、まずは自社の電力消費量を3割節電することを決めた。全店舗でLED照明を導入や冷暖房の設定温度の見直しなどを実施した結果、3割削減は十分可能だったと吉原氏は言う。
また、ボランティア休暇の導入や社員の被災地ボランティアのサポート、被災した地域の信金の内定取り消し者の採用なども積極的に行っている。城南信金では同時に、消費者がソーラーパネルやLED照明、蓄電池など節電のための商品を購入する際の、低金利のローンなど、本業でも脱原発・節電を推進している。
しかし、城南信金のこのような動きをよそ目に、経団連に代表される日本の経済界は依然として原発推進の立場から抜け出ることができないのはなぜか。吉原氏は、表では勇ましく原発推進を謳っている企業や企業人も、個人レベルでは原発が危険であることは十分にわかっているし、恐らく、できることなら原発はやめたいと思っているにちがいないと言う。しかし、大企業ほど地域独占の電力会社との関係は深く、株式や電力債などを通じた実利面でも、多くの企業が電力とは強い利害関係で結びついている。個人的な思いはあっても、経済的、心理的にそう簡単には原発から抜け出せない構造になっているというのだ。
とは言え,城南信用金庫も、事業として金融業を行っている業界トップクラスのれっきとした金融機関だ。損得勘定抜きで事業は成り立たないはずだ。目先の利益に目が眩みそうになった時、吉原氏は城南信用金庫の中興の祖、故小原鐵五郎氏の教えを改めて肝に銘じるという。小原哲学とは、目先の利益を追い求めるものは、最後には大きな損をするという教えだと、吉原氏は言う。小原氏の「貸すも親切、貸さぬも親切」の教えを守り、バブル期にゴルフ場開発や株式、投資信託など投機性の高いプロジェクトへの融資をあえて行わなかったことが、城南信金がバブル崩壊の痛手を大きく受けずに、今日の地位を気づけている要因になっていると吉原氏は胸を張る。
実際のところ、今後コミュニティバンクとしての信用金庫が担うべき役割は多い。あの悲惨な原発事故を受け、これからの電力供給は、これまでのような大手の電力会社に全面的に依存する中央依存型から、再生可能エネルギーなどを中心に、地域の比較的小規模な事業者や各家庭が担っていく地域分散型へのシフトが避けられない。この中央から地方分散へのシフトを支えていけるかどうかに、信用金庫の真価が問われることになるだろう。吉原氏に、脱原発宣言の経緯やその影響、そしてその背後にある小原哲学などの理念と金融機関が追うべき社会的責任について聞いた。
<今週のニュース・コメンタリー>
・福島報告
福島は内部被曝が放置された深刻な状況ECRRのバスビー博士が福島県内を調査
報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)
・濫用が懸念されるコンピュータ監視法で初の逮捕
・体感治安をネット空間に持ち込む警察の思惑
・明治大学が3年連続で一番人気
<関連番組>
■特別番組福島第一原発事故
http://www.videonews.com/special_fukushima/index.php
■プレスクラブ(2011年07月13日)
「原発に依存しない社会を目指す」
菅首相が脱原発宣言
http://www.videonews.com/press-club/0804/001974.php



